【12月1日 AFP】これまで中国で数々の海外リアリティー番組を真似した番組を制作してきたJin Lei氏は、正式な権利を獲得して挑んだオーディション番組「チャイナズ・ゴット・タレント(China's Got Talent)」の大成功を受け、正式な権利獲得こそが中国テレビの発展をもたらすのだと確信した。

 スーザン・ボイル(Susan Boyle)さんやポール・ポッツ(Paul Potts)さんら人気スターを輩出した英人気オーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント(Britain's Got Talent)」の中国版として、上海文広新聞伝媒集団(SMGShanghai Media Group)が制作した「チャイナズ・ゴット・タレント」は大ヒットを記録した。両腕が無く、足の指で演奏するピアニスト劉偉(Liu Wei)さんなどの人気スターも生まれた。

 番組の成功を受け、中国のテレビ業界では模倣番組の制作をやめて、番組版権を獲得する動きが広がっている。

 Jin氏は、「われわれの制作チームは、これまでに何本も『アイドル~』形式の番組を作ってきた」と述べる。最大のヒットは2007年の番組「マイ・ヒーロー(My Hero)」。しかし、「いまは、われわれのチームもわたしも、パクリが嫌いになった」

■フランチャイズ番組に進出

 中国国営の中国中央テレビ(CCTV)は最近、初めて外国の番組フォーマットを買った。日本のテレビ番組のコーナー「脳カベ(Hole In The Wall)」だ。  一方、SMGも米リアリティー番組「アメージング・レース(Amazing Race)」のフランチャイズ権を買った。英ドラマ「オフィス(The Office)」主演のリッキー・ジャーヴェイス(Ricky Gervais)によれば、中国版「オフィス」の制作も始まっているという。

 SMG傘下のドラゴンテレビ(Dragon TV)が「チャイナズ・ゴット・タレント」の3年間の放映権として支払った額は100万元(約1300万円)。番組のグローバルスポンサーである米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)も契約に協力したという。 「小規模の衛星テレビ局がこの番組をコピーしようとしたことが何度もあったけど、どこも成功しなかった。なぜなら、見た目だけをコピーして『マインド』と『ハート』をコピーできなかったからだよ」(チャイナズ・ゴット・タレントを制作したJin Lei氏) ■「バイブル」に従い記録的人気 「ブリテンズ・ゴット・タレント」を作ったFremantleMediaの制作ハンドブックは、業界では「バイブル」として知られている。Jin氏は、このバイブルこそがストーリーテリングや制作テクニック、全体の質を大幅に高めるために不可欠だったと語る。 「バイブルに書かれていることは全部従ったよ。(たとえば)オーディション参加者1人ずつに、申し込み書類に記入した瞬間から番組から立ち去る瞬間まで、常に10台のカメラをつけて撮影したんだ」

 視聴者にも大人気で、SMGの番組史上最高の評価をたたき出した。視聴率は最終回に中国全土で5.7%を記録。上海(Shanghai)では34.9%を記録し、国民的イベントのCCTVの春節(旧正月、Lunar New Year)前夜祭番組をも抜いて同市の年間最高視聴率番組に輝いた。

■ディズニーのライセンス番組も成功

 権利を買い、番組のバイブルを得ること。これが成功の鍵だ、とSMGの上海国際チャンネル(ICS)の重役Li Yi氏は語る。Li氏は「アメージング・レース」の制作責任者だ。

 SMGは、「アメージング・レース」の権利を所有するディズニー(Disney)に前年、中国版「アメージング・レース(英語版)」を上海万博(World Expo 2010)開幕までの1年間制作したいと交渉を始めた。

 交渉に時間がかかるとみたICS側は、類似の番組「上海ラッシュ(Shanghai Rush)」を制作しつつ交渉を続けたが、交渉成立後のことし8月についにデビューしたディズニーの正式なライセンスによる番組「アメージング・レース」は、「上海ラッシュ」の実に3倍の視聴者を獲得することに成功した。

 番組制作にあたってはディズニー側から専門家が加わり、制作をアドバイスした。また、ディズニー側は「非常に多くのマンパワー」を提供したという。

 結果、制作費はICS過去最高となった。しかし、利益も過去最高だった。 「権利を買い、エッセンスを学ぶことはとても重要なことだ」と、Li氏は語った。(c)AFP/D'Arcy Doran