【11月30日 AFP】タンザニアの港湾都市、ダルエスサラーム(Dar es Salaam)。太陽が沈みかけるころ、アルビノ(先天性白皮症)の若者たちが、道端の空き地に喜々として集まってくる。ここは、地元サッカークラブ「アルビノ・ユナイテッド(Albino United)」のホームグラウンドだ。

 この国では、2007年以来、わかっているだけで58人のアルビノが殺害されている。呪術(じゅじゅつ)師にお守りの材料としてアルビノの体の一部を売りさばこうと、こうした事件が頻発しているのだ。

 クラブの目的は、アルビノが「色素が欠乏しているだけの普通の人」であることを世に知らしめることだ。アルビノ殺人事件は主に北部ムワンザ(Mwanza)地方とその周辺で発生しており、ダルエスサラームではまだ1件も報告されていないが、クラブはアルビノの迫害傾向を押しとどめることを使命に掲げている。

 「チームは、選手に限らず、ダルエスサラーム内外のアルビノたちを幸福な気持ちにし、一致団結させることに貢献してきました」と、クラブ幹部のセベリン・エドワード(Severin Edward)氏は言う。

 クラブは08年に創設された。当初は「アルビノ・マジック」という名前だったが、呪術がからんだアルビノ殺人事件との関連性をほうふつとさせることから、現在の名前に変えられた。

■夢を追いかける若者たち

 少ない予算でやりくりしていることが、ホームグラウンドにも見て取れる。地面は砂だらけで、ゴールポストは木の枝を結び合わせた粗末なものだ。選手たちの多くは、きちんとしたシューズさえ履いていない。

 はだしで練習している17歳のサイード君の夢は、欧州のクラブチームでプレーすること。今のところ、このクラブを離れる気持ちはみじんもない。

 「僕はこのクラブを通じて成功できると思う。僕の面倒も見てくれるし」と、サイード君。時々寄付金を贈ってくれる人々もいる。「僕はクラブから大きな恩恵を被っています。学校の授業料は手当から工面できましたし、これまで行ったこともなかった他州にも行けるのですから」

 先天性白皮症とは、髪の毛、皮膚、目を太陽の紫外線から守ってくれるメラニン色素が欠乏する遺伝子疾患。多くの場合、視覚に障害をもたらす。

 ダルエスサラームのぎらぎらした太陽、貧困、そして虚弱なアルビノを襲う病気やけがにより、選手が練習に参加できないことも多い。選手たちは日光に極めて過敏であるため、練習は、太陽が沈みかけて涼しい海風が吹いてくる午後5時以降にならないと始まらない。

■アルビノの国会議員への侮辱

 タンザニア南部ではアルビノ殺人事件はほぼ起きていないものの、アルビノへの偏見は国内に広くまん延している。先日の総選挙では、同国初のアルビノの国会議員が誕生したが、落選した対抗馬はこの議員について、「彼はアルビノだから頭がまともに働かない」と発言した。

 タンザニア政府は、頻発するアルビノ殺人事件を受け、アルビノの保護を徹底すると宣言している。09年以降、少なくとも5人がアルビノを殺したとして死刑判決を受けているが、まだ1人も執行されていない。(c)AFP/Otto Bakano