【10月29日 AFP】『スラムドッグ・ミリオネア(Slumdog Millionaire)』でオスカーを獲得した映画監督ダニー・ボイル(Danny Boyle)が28日、ロンドン(London)で行われた新作『127 Hours』のプレミア上映会を前に会見を行い、同作で描いたむごたらしいシーンが物議を醸していることに対し、再生を描いているとして映画を擁護した。

 同作品は、米国人登山家アーロン・ラルストン(Aron Ralston)さんがユタ(Utah)州で登山中に谷に落ち、右腕を岩に挟まれた事故を映画化したもの。

 ラルストンさんは5日間、正確には127時間、岩の下から腕を外そうとするが叶わず、さらには携帯電話を所持しておらず、行き先を誰にも伝えていなかった。

 自らの尿を飲み、空腹で衰弱したラルストンさんは、自分の死後、両親に見てもらうためのビデオメッセージを数本撮影する。そして、生還する唯一の方法は腕の切断しかないという究極の結論に達する。しかし、ペンナイフを持っていなかったラルストンさんは、小型のツールキットで腕を切り離していく。

 再現されたこの生々しいシーンを試写会で見た人の中には、気を失う人もいた。

 しかし、ボイル監督は、同じ状況に立てば、誰もが同じ事をするだろうと語った。

「皆、同じ事をする。ナイフがなければ、かむだろう。とても辛い映画だが、素晴らしい価値がある。彼は人生を取り戻した。出産のようなものだ」

 さらに映画の主要なメッセージは希望だとも述べた。

 脚本を執筆したサイモン・ボーフォイ(Simon Beaufoy)は、自分たちは「アーロンが実際に体験したことを忠実に描く責任があった」と語った。

 ラルストンさんを演じたジェームズ・フランコ(James Franco)は、「彼は自分の死を予期していた。ハッピーエンドになるなんて知らなかった」と述べた。フランコの演技には、複数の批評家がオスカーを狙えると評価している。(c)AFP

【参考】『127 Hours』の公式サイト(英語)