【10月26日 AFP】英南西部ウィルトシャー(Wiltshire)州で、交通事故で四肢がまひした男性の人工呼吸器の電源を看護師の女性が誤って切ってしまう医療事故があった。これによって男性は脳に損傷を負った。

■介護の質に疑問、カメラ設置

 2002年に交通事故で頚部を骨折したジェイミー・メレット(Jamie Merrett)さん(37)は首から下が不自由になり、在宅介護を受けて生活していた。

 だが、看護師から受ける介護の質に疑問を感じたメレットさんは、ベッド脇にビデオカメラを設置。今回、このカメラがとらえた映像から医療事故が明らかになった。ウィルトシャー州の社会保障当局がこのビデオ映像を英国放送協会(BBC)に提供。BBCは25日、映像を放映した。

■人工呼吸器が21分停止、脳に損傷

 映像にはバイオレッタ・アイルウォード(Violetta Aylward)看護師が人工呼吸器のスイッチを切る様子がとらえられていた。同僚が「今、何やったの?」とたずねると、アイルウォード看護師は呼吸器を指差し、「このスイッチを切ったんだけど」と答えている。

 メレットさんはスイッチを切られたことに気づいたのか、看護師の注意を引こうとして舌を鳴らす音が聞こえた。蘇生措置をとろうとしたアイルウォード看護師は、蘇生用バッグを誤った位置に取り付けた。21分後に救急隊員が呼吸器を再び正常に稼動させたが、すでにメレットさんの脳は損傷を受けていた。

■看護師の技能管理に問題

 それまでメレットさんは会話や車椅子での移動もしていたし、肉声で操作するパソコンも使いこなしていた。しかしメレットさんのきょうだい、カレン・レイノルズ(Karren Reynolds)さんはBBCに対し、「彼はもう生きていないも同然」と語った。「今も存在はしているけど、以前の彼とは比ぶべくもない」

 アイルウォード看護師の派遣元で、英国民医療制度(NHS)に看護師を派遣している「Ambition 24hours」は、内部調査を行っている最中なのでコメントできないと話している。だが、BBCにリークされたウィルトシャー州社会保障当局の報告書によると、Ambition 24hoursには派遣する看護師が必要な訓練を受けたことをチェックする適切なシステムがなかったと結論づけている。

 一方、同州のNHSプライマリーケア財団は、「このような事故が二度と起きないようあらゆる手段を導入する」との声明を発表した。(c)AFP