【10月22日 AFP】壁際のスクリーンに映し出されたマリリン・モンロー(Marilyn Monroe)が『紳士は金髪がお好き』の一節を歌う隣には、クリスティン・スコット・トーマス(Kristin Scott Thomas)が金髪のかつらを外して地毛の黒髪を見せる写真――。

 今月パリ(Paris)で開幕した『Brune/Blonde(ブルネット/ブロンド)』展は、これまで制作された映画やテレビ映像、写真や芸術の数々を通して、女性の髪が映画の中でどのように描かれてきたのかを時代の変遷とともに追う展覧会だ。

 ポスターには、プラチナブロンドのかつらをかぶったペネロペ・クルス(Penelope Cruz)が起用された。

■20世紀はブロンドの時代

 キュレーターのアラン・ベルガラ(Alain Bergala)氏は、ヴェロニカ・レイク(Veronica Lake)のようなグラマーな巻き髪にしろブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)ようにワイルドに流した髪にしろ、「あらゆる映画、すべての制作者にとって、女性の髪とは永遠のモチーフ。20世紀のハリウッドは、ブロンド帝国主義が支配していた」と語る。

 会場では、ジェーン・フォンダ(Jane Fonda)がデビュー当時の思い出を語る映像が流れる。それによると、彼女の髪の色は「商業的には暗すぎる」と言われ、最初の10年間は髪とまつげを金色に脱色していたという。

■時代とともに変遷するイメージ

 しかし銀幕の世界でも、ブロンドの持つイメージは「純粋」と「妖艶」の間を行ったり来たりしてきた。

 1930年代までは、ブロンドが象徴するのは上品な主婦で、ブルネットこそが人を誘惑する女だった。しかし、しばらくすると状況は一変し、モンローに代表されるようにブロンドはファム・ファタール(魔性の女)の地位を得た。

「例え基準が変わっても、その時代の視聴者はグッド・ガールとバッド・ガールを見分けることが出来るんです」とベルガラ氏。

 90年代に入ると、ブロンドとブルネットに対する固定概念は薄れる。デヴィッド・リンチ(David Lynch)監督の『ロスト・ハイウェイ(Lost Highway)』には、ブロンドと黒髪の一人二役を演じるパトリシア・アークエット(Patricia Arquette)が出演するが、ベルガラ氏によるとこれは、監督の「すべての女性の内にはブロンドとブルネットが同居している」というアイデアを具現化したものだという。

■政治情勢も髪型・色に影響する

 展示会では、数十年にわたる「髪の毛をめぐる政治」についても言及する。たとえば、19世紀から20世紀半ばに至るまで、女性のショートヘアは女性解放運動の象徴だった。

 第2次世界大戦中は、プロパガンダ映画が女性たちに(髪の毛が目にかかる)ヴェロニカ・レイクの真似をやめて、工場での作業に向いた髪型にするよう呼びかけたほか、ナチスが純血種の象徴として金髪を尊んだ時代もあった。(c)AFP/Emma Charlton

【参考】『Brune/Blonde(ブルネット/ブロンド)』展 公式ページ(フランス語)