【9月23日 AFP】ハリウッド(Hollywood)の大物俳優たちの中には映画監督としても高く評価されている面々がいるが、先日開催されたトロント国際映画祭(Toronto International Film Festival)では、監督業での成功と引き替えに名優たちの演技をスクリーンで見る機会が減ったことを嘆く声が聞かれた。

 同映画祭では、映画監督としても活躍する俳優たちが次々と新作を公開した。多くの場合は、自らも出演している。ただ、監督という多忙な仕事に追われ、出演シーンは少なくなる傾向が高い。

 映画祭に参加したある女性は、「彼らはとても素晴らしい俳優なのに、残念」と語った。

■俳優と監督、両方こなすスターが続々

 ベン・アフレック(Ben Affleck)は監督2作目となる『The Town』を出品して、高い評価を得た。弟のケイシー・アフレック(Casey Affleck)も、ラッパーとして活動し始めたホアキン・フェニックス(Joaquin Phoenix)のドキュメンタリー『I'm Still Here』を携えてトロントにやってきた。

『カポーティ(Capote)』で2005年のアカデミー賞主演男優賞を獲得したフィリップ・シーモア・ホフマン(Philip Seymour Hoffman)は監督デビュー作となる『Jack Goes Boating』を撮り、クリント・イーストウッド(Clint Eastwood)とロバート・レッドフォード(Robert Redford)はそれぞれ新作の『Hereafter』と『The Conspirator』を公開した。

■時間とエネルギーを使う監督業

「いつだって(俳優と監督の)両方やりたいよ」と語ったのは、エミー賞にノミネートされたこともある映画監督で俳優のデヴィッド・シュワイマー(David Schwimmer)だ。今回、新作『Trust』をひっさげトロントを訪れた。だが「監督業には長い時間が求められる」と言う。

「1本の映画を監督するのにどれだけの時間とエネルギーが必要なのかが分かってからは、自分に意味のある映画しか作れないなと思っている」

 ジョン・カーラン(John Curran)監督の映画『ストーン(Stone)』でエドワード・ノートン(Edward Norton)やミラ・ジョヴォヴィッチ(Milla Jovovich)と共演したロバート・デ・ニーロ(Robert De Niro)は、せいぜいあと3本しか監督しないだろうと記者会見で公言した。

 デ・ニーロは1993年の『ブロンクス物語/愛につつまれた街(A Bronx Tale)』で監督デビュー。2006年にはマット・デイモン(Matt Damon)とアンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)が共演した『グッド・シェパード(The Good Sheppard)』でメガホンを取っている。

■俳優と監督の両立は?
 
 2007年の監督デビュー作『ゴーン・ベイビー・ゴーン(Gone Baby Gone)』が好評を博したアフレックは、監督業と俳優業の両立について、「たまたま俳優になった素晴らしい監督がいることを象徴している傾向だと思う」とコメント。クリント・イーストウッドやウォーレン・ベイティ(Warren Beatty)を例に挙げ、「オーソン・ウェルズ(Orson Welles)も両方をこなした」と語った。

 最近の例としては、ロン・ハワード(Ron Howard)、シドニー・ポラック(Sydney Pollack)、ソフィア・コッポラ(Sofia Coppola)、ショーン・ペン(Sean Penn)などがいる。

 アフレックはさらに、「外から見たら、俳優、脚本家、カメラマン、編集者の間には踏み越えられない厳格な線引きがあるように見えるのだろう。だが、彼らは同じスープに入っていて、ある立場から別の立場へ変わるのは自然で有機的な発展のようなものなんだ。私は演じることも監督をすることも好きで、たぶん欲深いのかも。この2つは両立できるものだと思う」と話した。

 また、監督業について、「朝っぱらからトレーラーに入ってメイクをする必要がないというのがいいね」と軽口も交えた。(c)AFP/Michel Comte