【9月18日 AFP】世界の水産資源をより適切に管理することで、貧困国を中心に今よりもさらに2000万人分の食料が確保できると推計した研究が14日、学術誌「ジャーナル・オブ・バイオエコノミクス(Journal of Bioeconomics)」に掲載された。

 報告書をまとめたのはカナダ、バンクーバー(Vancouver)にあるブリティッシュコロンビア大学水産センター(University of British Columbia Fisheries Centre)の科学者や経済学者ら。同研究では全世界の水産業の規模を世界で初めて金額で推計し、計2400億ドル(約21兆円)と示した。一方で、政府の助成金支給により乱獲が助長され、水産資源の破壊につながっていると警告を発した。

 研究に資金提供した環境NGO「ピュー環境グループ(Pew Environment Group)」のレベッカ・ゴールドバーグ(Rebecca Goldburg)氏は、「全世界の人びとにとって、水産業にどれだけの価値があるかを金額で示し、全体像を分析した初の」研究だと述べた。

 報告書によると全世界の水産業は、加工業も含めると年間で総額2400億ドル規模に上る。そして、乱獲を完全に撲滅した場合、今よりもさらに2000万人分の食料を提供することができると主張している。

 しかし安価な燃料提供など、年額270億ドル(約2兆3000億円)相当の水産業助成のうち、160億ドル(約1兆4000億円)相当分は乱獲を悪化させ、水産資源を破壊しているという。

 また釣りやクジラウォッチング、ダイビングなど海に関連するスポーツは100万件の雇用を生み出しており、その価値は470億ドル(約4兆円)相当と推算された。

 研究チームを率いた水産センターのラシド・スマイラ(Rashid Sumaila)氏は「健全な水産業を維持することは、経済的にも意味がある」と語った。

 水産業の規模はこれまで、水揚げ高によって測定されてきた。スマイラ氏はAFPの取材に対し、従来の測定方法では、2000年の世界の水産業の規模は850億ドル(7兆3000億円)だったと語った。(c)AFP