【9月11日 AFP】襟なしスーツに細いブラックタイ、マッシュルーム・カットの4人は、あの4人に信じられないど似ていた。もちろん手にする楽器はそれぞれのモデルのギターやベースだ。

 ひとつ違う点は4人の名前が英語のジョン(John)、ポール(Paul)、ジョージ(George)、リンゴ(Ringo)ではなく、スペイン語のディエゴ(Diego)、フアン・カルロス(Juan Carlos)、フランシスコ(Francisco)、エリベルト(Heriberto)であるところ。それ以外の点ではこのバンド、「ファブ・フォー(Fab Four)」は、初期ビートルズ(Beatles)以外の何者にも見えない。

 演奏場所も英リバプール(Liverpool)のキャバーン・クラブ(Cavern Club)ではなく、米ワシントンD.C.(Washington D.C.)郊外のポトマック(Potomac)川畔。それから、彼らに喝采を送る聴衆は、英国人ではなく、米国に住むプエルトリコ系移民だ。

■世界から50組が出場

 ビートルズの洗礼を受けたという音楽好きが集うフェスティバル、「アビーロード・オン・ザ・リバー(Abbey Road on the River)」。レイバーデーの連休の6日、「世界最大のビートルズ音楽フェスティバル」と銘打たれたこのイベントのステージには、ドイツの「ルーシーイン・ザ・スカイ(Lucy in the Sky)」や、世界最北のビートルズ・バンドだと自負する「ザ・ノーウェジアン・ビートルズ(The Norwegian Beatles)」など、各国からやって来た50組のコピーバンドが登場し、観客をシャウトさせた。

 演奏曲がビートルズの曲であれば、出場バンドの形態に限定はない。ジョージ・ハリスン(George Harrison)の曲の楽器演奏を1人でカバーするワンマン・オーケストラから、バイオリンとチェロにソロ歌手を加えたビッグバンドまである。

 ビートルズの衝撃的デビューから半世紀。しかし依然、このバンドは次々と若い世代を魅了し、ファンが絶えることはない。「プエルトリカン・ビートルズ」のファブ・フォーは自分たち自身40代に近く、ビートルマニア全盛期の頃の4人の若さはないかもしれない。しかし、そんな彼らもビートルズ解散時には生まれてさえいなかった。プエルトリコ系の4人が、完璧な英語で次々とヒット曲を繰り出す。目の前では髪が白くなった「当時の若者」たちが昔さながらの歓声をあげる。

■「楽しい時間を共有したい」

 出演バンドのひとつ「ザ・ジュークボックス(The Jukebox)」で、ジョージ・ハリソンの担当部分を弾くリードギタリスト、フランシスコ・カイロル(Francisco Cairol)氏は「ビートルズみたいに見えるようにがんばってはいるけれど、自分たちがビートルズであるかのようなふりをするつもりはないよ」と語った。単純に聴衆と楽しい時間を共有したいと考えているという。

 会場にはステージ・コスチュームのレプリカなど、ビートルズ・グッズを売る出店も数多く並ぶ。Tシャツを売っていたデビッド(David)さんは、景気が悪くてもビートルズ・グッズの商売がすぐにだめになる心配などないと言う。「音楽が滅びない限り、グッズの売れ行きも落ちないよ」

 2002年から開催されている「アビーロード・オン・ザ・リバー」には、毎年3万人の聴衆が詰めかける。初回から2004年まではオハイオ(Ohio)州クリーブランド(Cleveland)で、05年からはケンタッキー州(Kentucky)ルイビル(Louisville)で開催され、今年初めてワシントン近郊のメリーランド(Maryland)州ナショナルハーバー(National Harbor)で開かれた。(c)AFP/Patrick Baert