【9月9日 AFP】米フロリダ(Florida)州ゲーンズビル(Gainesville)にあるキリスト教福音派の教会が、米同時多発テロから9年目を迎える11日にイスラム教の聖典コーランを焼却するイベントの計画を宣言した問題に揺れる米社会。しかし、米社会にはイベントを事前に中止させる手段がないのが現状だ。米憲法が言論の自由を保障しているからだ。

■米国旗や十字架の焼却をも認める

 米憲法修正第1条は、米市民が自由に意見を表明し平穏に集会する権利を制限する法律の制定を禁じている。

 これに基づき米最高裁は、たとえ一般社会に不快感を呼び覚ます行為や言論であっても、脅迫を意図したり暴力的なものでないかぎり政府は介入できないとの判断を何度か下している。

 たとえば、米国民にとって米国旗を焼くという行為は非常に神経を逆なでされる行為だが、米最高裁は1989年、5対4の評決で、48州に米国旗を焼く行為を禁じる法律の廃止を命じた。ウィリアム・ブレナン(William Brennan)最高裁判事(当時)は、「修正第1条の根底にある原則によれば、政府は社会的に不快だとか、同意できないというだけの理由によって、ある考えの表明を禁じるべきではない」と書いている。

 最高裁は、米国旗を燃やした人を守る判断を下したことさえある。白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(Ku Klux KlanKKK)が十字架を燃やす権利さえ保障されている。最高裁は2003年、KKKが公共の場で十字架に火を付ける行為に脅迫の意図はないとして、バージニア(Virginia)州がこの行為を禁じた州法を違憲と判断した。

■コーラン焼却も「言論の自由」

 こうした事情から、ダブ・ワールド・アウトリーチ・チャーチ(Dove World Outreach Center)のテリー・ジョーンズ(Terry Jones)牧師らによるコーラン200冊を公開焼却する計画に対して怒りや懸念の声が高まっていても、米当局には強制的に計画を中止させる手段がない。

 当局にできるのは、火が手に負えなくなった時など、コーランに火をつけた事後に介入することだけだ。

 消防署は屋外で火を燃やしたいという教会側の許可申請をすでに却下しており、教会側は自治体の条例に違反にすることになるが、あくまで軽罪。警察はだれも逮捕できず、せいぜい警告するか、出頭命令を出す程度で、科される罰金も250ドル(約2万1000円)ほどと見られている。(c)AFP/ Lucile Malandain

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