【9月8日 AFP】反イスラム感情の高まる米国で、2001年9月11日の米同時多発テロから9年となる11日にフロリダ(Florida)州にあるキリスト教福音派の教会がイスラム教の聖典コーランを焼却すると宣言し、米軍司令官や米政府高官が相次いで懸念を表明している。

 国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)による9.11同時多発テロの3000人近くの犠牲者を追悼するため、9月11日にコーランを焼却するとフロリダ州の小さな教会が宣言。テリー・ジョーンズ(Terry Jones)牧師は、「9.11で残酷に殺害された人びとを追悼する」とともに「イスラム教の過激分子」に警告を発することが目的だと語った。

 この計画について、アフガニスタン駐留米軍のデービッド・ペトレアス(David Petraeus)司令官は、アフガニスタンの武装勢力にプロパガンダを提供することになると警告し、「米軍部隊を危険にさらし、これまでの努力を危うくしかねない」と米紙ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street JournalWSJ)に述べた。

 軍司令官らの間で懸念が広がっていることを受けて、ロバート・ギブズ(Robert Gibbs)ホワイトハウス報道官も、米国の福音派による扇動的な行動は、イスラム世界で激しい抗議を巻き起こす危険性があると懸念を表明した。

 また、米国務省のフィリップ・クローリー(Philip Crowley)報道官は、信教の自由は米国社会の柱であると述べ、「コーランを焼却するという計画は、われわれの価値観に反する。米国の市民社会の成り立ちにも反する」との考えを示した。

 この計画は、米同時多発テロで崩壊した世界貿易センター(World Trade Center)ビル跡地「グラウンド・ゼロ(Ground Zero)」のそばに、イスラム文化センターを建設する計画が承認されたことに端を発して、米国社会で「イスラム恐怖症(イスラモフォビア)」が駆り立てられている中での出来事となった。国内の反イスラム感情のうねりを抑えようと、エリック・ホルダー(Eric Holder)米司法長官は7日、宗教指導者たちと会談を行った。

 今年の9月11日は、イスラム教の断食月「ラマダン(Ramadan)」明けの祭り、「イード・アル・フィトル(Eid al-Fitr)」とも重なる。(c)AFP