【9月1日 AFP】バトさん(24)はモスクワに留学経験があるモンゴル人で、話しぶりは穏やか、着こなしも洒落ている。しかし自慢げに見せてくれた携帯電話の待ち受け画面には、ナチスドイツ親衛隊高官の頭がい骨が映っていた。

 外見を見ただけでは、バトさんがモンゴルで極右団体に指定されている3団体のひとつ、「ダヤール・モンゴル運動(Dayar Mongol)」のメンバーだとは思えない。

 この排外主義団体が掲げる第1の敵は中国だ。中国とロシアに挟まれた内陸国で、旧ソ連の衛星国だったモンゴルは20年前、ソ連の崩壊とともに資本主義へ移行した。経済発展に取り組んだものの、依然としてアジア最貧国の1つに数えられている。

 外国人投資家が金、銀、銅、ウラン、石油といった豊富な天然資源に注目していることは、今後の経済成長に期待させる要素だが、ダヤール・モンゴル運動のような団体のメンバーは、経済、文化などあらゆる面で外国の影響を拒絶する。

■中国人を殺した事件も

 モンゴルの極右団体による犯罪は外国にも知られている。米国務省は今年の春以降、モンゴルで「外国籍の人間に対する拝外主義的襲撃事件が増加している」との渡航情報を出した。米国務省のウェブサイトは「こうした国粋主義団体は、アジア系アメリカ人を中国人や韓国人だと誤解し、突然襲撃することが多い」と注意を呼び掛けている。

 モンゴルの首都ウランバートル(Ulan Bator)では今年に入り、中国人2人が殺されている。警察では、ウランバートル郊外で中国人がモンゴル人を殺害した事件がきっかけに極右団体の活動が活発化したとみている。

 鉱山開発や建設事業で中国の影響力が増したことも、モンゴルの排外的民族主義を強める一因だと指摘する専門家もいる。200年にわたって満州族に支配された歴史をもつモンゴル人の中には、中国マネーがもたらす新たな繁栄への期待よりも、中国の野心に対する警戒心のほうが強いという見方もある。

 世界銀行(World Bank)の鉱業専門家、グレアム・ハンコック(Graeme Hancock)氏はAFPの取材に対し、モンゴルが自国を「中国経済の「郊外」のような存在にしたがっていないことは明らかだ」と語った。

 モンゴル科学アカデミー(Mongolian Academy of Sciences)国際研究所のショルフー・ドルジ(Shurkhuu Dorj)氏は、極右団体の台頭の方が大きな問題だという。極右団体の規模はまだ数百人程度だが、「モンゴルに来る外国人、主に中国人の違法行為に対する彼らの自警団的活動は、モンゴル全体の支持を得る可能性がある。それこそ真の脅威だ」(c)AFP/Kitty Hamilton