【9月1日 AFP】長江(揚子江、Yangtze)にある世界最大級のダム、三峡ダム(Three Gorges Dam)周辺の環境が大幅に悪化していることについて、中国政府は31日、環境回復策に100億元(約1240億円)以上を投入すると発表した。

 記者会見した中国国家林業局の賈治邦(Jia Zhibang)局長は「原因はさまざまだが、川の両岸の森林破壊は深刻だ。山はだや丘がむきだしになり、このことがまた(地滑りのような)2次災害を引き起こしている」と懸念を表明した。

■ダム湖沿いの森林被覆率を65%に

 会見に出席した重慶(Chongqing)市の黄奇帆(Huang Qifan)市長は、新たな計画によって長さ約600キロのダム湖沿いの森林被覆率を、現在の22%から65%に増やす努力をすると語った。

 ダム上流に位置し、3000万人以上が暮らす重慶市は都市排水の浄化に多額の投資をする方針も明らかにしている。ここ数年で下水処理施設に500億元(約6200億円)を投じた重慶市は、今後3年でさらに280億元(約3500億円)を追加投入すると市長は述べた。

■さらなる強制移住も

 総工費225億ドル(約1兆9000億円)を投じて建設された水力発電用の三峡ダムについては、周辺住民の生活と環境に計り知れないダメージを与えているという批判がある。特に問題視されているのは両岸の浸食と、流域に堆積していくゴミだ。

 ダム建設地を作るために強制移住を余儀なくされた住民は公式発表で140万人だったが、政府は今年初め、さらに30万人を強制移住させるだろうと発表した。この追加移住には流域の汚染抑制と、相次ぐ地滑りなどから住民を守るというふたつの目的がある。

 今夏は降り続いた大雨や洪水の影響で、さらに大量のゴミが長江に流れ込んだ。英字紙チャイナ・デーリー(China Daily)は8月2日、川の上を歩けるほど分厚いゴミの層ができたところもあると報じた。(c)AFP