【8月31日 AFP】2種類のアリのDNA配列を解読したとする論文が27日の米科学誌サイエンス(Science)に発表された。研究者らは、アリは社会的な生き物で、生存を共同体に依存している点が人間と極めて似ているため、今回の研究が人の老化や行動に関する理解を深めることになると期待を寄せている。

 ニューヨーク大学ランゴンメディカルセンター(New York University Langone Medical Center)を中心とする米中共同チームは2008年、ジャンプアリの一種とオオアリの一種について、エピジェネティックな差異を見出す研究を開始した。

 エピジェネティックスとは、DNAの塩基配列の変化ではなく環境の変化がどのように遺伝子を活性化・不活性化するかを研究する学問で、有機体の特質や遺伝子発現に遺伝がどの程度影響しているかを測る上で有用だ。

 2種類のアリはゲノムが完全に解読されたが、ゲノムが解読された社会性昆虫としてはミツバチに次いで2番目となる。 

■役割の変化でタンパク質が過剰発現

 研究では、女王アリの寿命が数年と、働きアリの3週間~1年の10倍も長いアリ社会について、寿命におけるエピジェネティックスの役割に焦点が当てられた。

 ジャンプアリの場合、女王アリが死ぬと、働きアリたちは熾烈な戦いを繰り広げ、最後まで残った数匹が新たな女王アリになる。 

 研究チームは、このようにして女王になったアリにおいて、寿命をつかさどる酵素テロメラーゼなどのタンパク質が過剰発現していたことを見出した。人体などで遺伝子発現を処理している遺伝物質の一種、小型リボ核酸(RNA)も大量に含まれていた。

 オオアリの社会では、女王アリだけが卵を産み、卵を産まないアリについては兵隊アリが上位に、食べ物を集める働きアリが下位に所属する。研究チームは、エピジェネティックスのもと、それぞれの仕事に応じて脳が形成されると指摘。脳を支配する遺伝子の発現における重要な差異を突き止め、アリの行動に影響を与える遺伝子の役割を説明した。(c)AFP