【9月2日 AFP】古代ローマ風のチュニック姿に鉄かぶと、あたかも命のかかった決闘さながらに剣をぶつけ合う――。2人は米ペンシルベニア(Pennsylvania)州からやって来た観光客だ。

「ただの遺跡めぐりとはちょっと違うことをしたいと思ったんだ」。クリス・コッフマン(Chris Coffman)さん(43)はこの「グラディエーター講座」をインターネットで見つけた。

 古代ローマの交通の要だったアッピア街道(Via Appia)沿い、円形闘技場の遺跡コロッセウム(Colosseum)からほど近いここは「ローマ歴史研究グループ(Gruppo Storico Romano)」が主宰するローマ剣闘士の術を学ぶコースの道場。コッフマンさんたちはこの日の午後、2000年の時をさかのぼったようだ。

■ローマっ子140人が支える歴史保存

 ローマ神話の神ヘルメス(Hermes)を名乗るインストラクターは言う。「ここでわたしたちがやっていることは実験的な考古学です」。平日は不動産会社で働いているが、週末にはローマの剣闘士となって訪れる人たちにボランティアで技を伝授する。この歴史グループは、彼のような「ローマに情熱を捧げる」歴史好き140人によって運営されている。「ローマ人であるということは、ローマに住んでいることだけではない。『ローマに命を与える』ことなんだ」

 ラッセル・クロウ(Russell Crowe)が主演した2000年のハリウッド映画『グラディエーター(Gladiator)』のヒットで、講座の人気は急上昇した。コッフマンさんは、実際の剣は「映画で見て思ったよりも少し重いですね」と話した。

 講座はまずロープで吊るされた重いサンドバッグをよけるところから始まる。次に回転台に取り付けられた棒をよける練習をして、反射神経をテストする。こうしたウォーミングアップの後に、1対1の戦闘練習に入るが、最初は木刀、それからインストラクターの監視のもと、本物の鉄の剣を使う。たとえ子どもでも、「本日のスパルタカス(Spartacus)」になれる。

■あくまで歴史の真実を追求

 近くには、古代ローマ時代の品々の複製品350点が並ぶ歴史グループ所有の博物館があり、見学者は剣やかぶと、敵を脅かすために音が出るベルトまで、どれでも手にとってみることができる。

 ペンシルベニアでは空手や自転車、ハイキングなどを楽しんでいるというコッフマンさんは「歴史的な知識が得られて面白かった。本物の、古い時代を肌で感じられたね」とご満悦だ。「映画では事実とは違う部分があったことも分かった。決闘の後に奴隷を自由にするか、殺すかを決めるときの合図とかね」

 複製品はすべて、このグループが工房で作ったものだ。グループは、ローマや欧州だけでなく、遠く中国、米国でもパレードや歴史行事を定期的に開催している。「ペトロニオ」を名乗るグループ副会長は誇らしげに語った。「武器も衣装も、実在したものだけを作っている。すべて深く研究し、記録に残している」

「グラディエーター講座」は2時間で1人100ユーロ(約1万800円)、10人以上のグループで受講すれば25ユーロ(約2600円)となる。(c)AFP/Francoise Kadri