【8月17日 AFP】オーストラリア沖の浅海で発見された色鮮やかな蛍光性のサンゴ礁群が、抗がん剤研究に新たな道を開きうると注目されている。

 オーストラリア本土から東へ約600キロ、ロード・ハウ島(Lord Howe Island)沖で科学者チームは、強烈な緑や青、赤色に光るサンゴの密集地を発見した。

 14日に取材に応じたチームの一員、西シドニー大学(University of Western Sydney)のアニヤ・サーリ(Anya Salih)氏は、蛍光色の鮮やかさ、サンゴ群の規模ともにこれまで発見された中で最高の部類だという。「サンゴに含まれるこうした色素は、生きている細胞の働きを調べて、がん細胞内で起きていることを研究していくうえで非常に有効だ」

 色鮮やかな色素を生み出す遺伝子で健康な細胞やがん細胞を標識し、レーザー光を用いた蛍光顕微鏡を使って観察することで、細胞の成長や変化を追うことができる。

 サーリ氏らは米カリフォルニア大学(University of California)と協力し、がん細胞と正常な細胞を比較し、抗ガン剤の有効性などを研究しているが、蛍光性の色素、中でも特に赤い蛍光性の色素は、組織の深い部分の観察に役立つという。

 サーリ氏によると、ロード・ハウ島周辺では今年初め、海水温の上昇によってサンゴ礁が突然いっせいに脱色する現象がみられた。サンゴ礁の回復過程を研究する中で蛍光性のサンゴ群が発見された。

 蛍光性色素の多いサンゴほど脱色のダメージが少なかったという。このことから、「蛍光性色素が、気候変動による温度変化のストレスからサンゴを保護する役割を果たしているという仮定が成り立つ」とサーリ氏は述べた。(c)AFP