【8月3日 AFP】オーストラリアの海洋学者らが、オーストラリアおよび日本の近海は地球上で最も多様な海洋生物が生息する地域であり、数千種を超える未発見の生命体が生息しているとする報告書をまとめた。報告書は、地球温暖化で、これらの生命体に危機が迫っていると警鐘を鳴らしている。

 10年におよぶ科学的海洋調査の結果をまとめた報告書「What Lives in the Sea(海に生息するもの)」によると、オーストラリアと日本の近海にはそれぞれ約3万3000種の海洋生物が生息している。

 さらに、3つの大洋と4つの海に囲まれ、サンゴ礁が広がる熱帯から冷たい南極付近まで達するオーストラリア海域には、25万の海洋生命体が存在する可能性があると、調査を主導したオーストラリア連邦科学産業研究機構(Commonwealth Scientific and Industrial Research OrganisationCSIRO)のアラン・バトラー(Alan Butler)氏はいう。

 これまでに確認されている3万3000種の多くは魚類、海鳥、海洋哺乳類などだ。だが、バトラー氏は、実際に生息している海洋生命体の2割にすぎないと考えている。

 中でも、世界遺産にも登録されているオーストラリア・グレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)は特に生物の多様性に富む海域で、美しいサンゴやイルカ、カメ、ジュゴンなどが生息している。

 調査チームの広報担当、ジェシー・オースベル(Jessie Ausubel)氏は、「オーストラリア周囲のサンゴ礁や深海は、海洋生命体にとって優れた保護海域となっている」と指摘する。

■日本近海の生物多様性は変化に富む海洋環境のたまもの

 一方、日本の独立行政法人、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の藤倉克則(Katsunori Fujikura)氏によると、日本の近海では15万5000種ほどの海洋生命体が観察されているが、これは日本近海に生息する生物の3割程度にすぎないと推定されている。しかも、15万5000種のうち、公式に登録されているものは3万3000種だけだ。

 藤倉氏によると、これほど多様な生命種が日本周囲の海域に生息しているのは、南はサンゴ礁、北では氷に覆われた海、水深1万メートルの海溝など多種多様な日本の海洋環境によるものだという。

 これに対し、南極に近い南洋(Southern Ocean)の海洋生命体は希少生物が多い。これまでに確認されたもの半数は1度か2度しか観察されていないため、まだ未確認の海洋生物が大量に生息しているものと、英南極調査所(British Antarctic SurveyBAS)のヒュー・グリフィス(Huw Griffiths)氏はみている。

 厳しい環境にある南極やその周囲では、コケ類、海綿動物、小型の甲殻類など8800種が確認されており、その9割以上が、水深1000メートル以深に生息している。だが、これまでに探索された深海は11%にも満たない。

 南洋では急速に温暖化が進んでおり、南洋に生息する生命体の解明は急務だとグリフィス氏は話す。

 温暖化による棚氷の崩壊に加え、南洋では海水の酸性化がいち早く進んでおり、サンゴや軟体動物などは絶滅の危機にあると、グリフィス氏は危ぐしている。

 こうしたなか、オースベル氏は、生物多様性の保護に成功しているオーストラリアは海洋生命体にとって、希望の指標となり得ると話す。その一方で、「世界は海でつながっている。1つの国だけで、全ての海洋生物を守ることは不可能だ」とも指摘した。(c)AFP/Amy Coopes