【7月25日 AFP】ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)首相が、米国でロシアの諜報員として暗躍していたとしてロシアに引き渡されたスパイたちと会い、さらに歌まで一緒に歌っていたことが明らかになった。

 25日にロシア政府のウェブサイトに掲載されたトランスクリプト(書き起こし)によると、旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身のプーチン首相は、美人スパイとしてタブロイド紙をにぎわせたアンナ・チャップマン(Anna Chapman)さんも同席したと述べている。

 プーチン首相は訪問中のウクライナで、ロシアの報道陣に対し「彼らと会って、人生について語ったり、歌ったりした。カラオケではなく、生演奏をバックにね」と述べた。

 歌ったのは、ナチス・ドイツで活動するソビエトのスパイを描いた1968年の映画で使われて流行した、祖国愛をテーマにした歌だという。「ジョークではなく、本当の話だ。ほかにも似たような内容の歌を歌った」

■「裏切り者は不幸な最期を迎える」

 プーチン首相はさらに、米での一斉逮捕は背信行為が原因で、誰の仕業か知っていることをにおわせた。

「裏切り者は不幸な最期を迎えると決まっている。アルコールや薬物におぼれ、路頭に迷うのだ」と語り、「たとえば最近もそんな(裏切り者)が1人、外国で消えた」と謎めいた言葉を口にした。「裏切り者への罰は記者会見で決まるわけではない・・・(諜報員たちは)彼ら独自のルールに従って生きている」

 プーチン首相は外国で死んだというこの人物について詳しくは語らなかったが、2000年に米国に亡命したロシアの元大物スパイで、一斉逮捕されたスパイの情報を米当局に提供したかもしれないと言われていたセルゲイ・トレチャコフ(Sergei Tretyakov)氏が6月に心臓発作で死亡している。53歳だった。奇妙なことに、トレチャコフ氏死去のニュースはスパイ交換が行われた7月9日になって初めて伝えられた。

■ロシアのスパイたちを称賛

 今回逮捕されたロシア対外情報局(SVR)の10人は、そのお粗末な手法をKGBの元凄腕スパイたちから酷評されているが、プーチン首相は「祖国のため長年にわたり、自分と、愛する者たちの身を危険にさらしながら困難な生活を送ってきた」とロシアのスパイを称賛し、「彼らは立派な仕事に就き、明るい人生を送るだろう」と述べ10人の生活を保障する考えを示した。

 会合が行われた日時は明らかにされていない。プーチン首相はチャップマンさんも同席していたとだけ明らかにしたが、それ以外の内容についてはコメントしなかった。

 プーチン首相は1985年から1990年までKGBのエージェントとして旧東ドイツのドレスデン(Dresden)で活動していた。これまでにも当時を懐かしむ発言をしている。(c)AFP/Stuart Williams

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