【7月21日 AFP】ガボンのアネングエ湖(Lake Anengue)に面した村落は今、世界から切り離されようとしている。群生するパピルスのせいだ。交通は妨げられ、仕事にも支障が出るため、多くの村人たちがほかの街へ移住した。
 
 これらの村に行くには大西洋岸の港湾都市ポールジャンティ(Port-Gentil)からカヌーで3時間ほどかかる。アネングエ湖の周りは赤道直下の広大な熱帯雨林で覆われ、その中に26の村が点在する。
 
 ある漁師は、網を繕いながら、「パピルスが茂って1か所しかない通路が通れなくなったら、森に閉じこめられたようなものさ。たくさんの農民や漁師がよそへ移住して行ったよ」と嘆いた。

 豊かな農産物で知られてきたこれらの村では、計2700人程度にまで人口が減っている。

■「精霊伝説」も生まれる

 ある公務員によると、地方自治体は約3年前から、重機を導入してパピルスの伐採を行っている。だが、パピルスの繁殖力はすさまじく、作業が終わってもまたすぐに始めないと間に合わない。高さ3メートルにもなるパピルスの生命力の強さと粘り強さから、地元ではいくつかの伝説が生まれている。

 その1つが、「オレンブエ」という名の精霊が、ほかの精霊に奪われた妻を取り返すためにパピルスを茂らせているというものだ。60歳代のある長老は、「彼は、妻を奪った精霊が湖の周辺にいると感じると通路を通れなくして、精霊をつかまえて妻を取り戻そうとするのです」と説明してくれた。

 そのため、パピルスが繁茂する雨期には、精霊の怒りを和らげるための儀式を行なうという。「食べ物やワインを供物として捧げます。そうすると、雨期が終わったあとも、通路には1本のパピルスも生えないんですよ」(c)AFP/Ousmane Niapa