【7月19日 AFP】2年に1度エイズ(HIV/AIDS)問題について話し合う第18回国際エイズ会議(International AIDS Conference)が18日、オーストリア・ウィーン(Vienna)で6日間の日程で始まった。

 開会にあたり、国連(UN)の潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長はビデオメッセージで、各国が資金援助を削減している点を指摘。国レベルでのエイズ対策が緩めば、29年間にわたる「エイズとの闘い」の取り組みすべてが水泡に帰すことになるとして、「最近の進展を逆行させてはならない」と呼びかけた。

■薬剤や対策での成果確認

 国際エイズ会議では、抗レトロウイルス療法の最新情報を確認する。抗レトロウイルス剤の開発はめざましい成果を上げており、「死の病」だったエイズを「対処可能な慢性疾患」へと変えた。

 今回の会議では、HIV感染予防のための膣内用ジェル開発の成果と、男性の包皮切除の呼びかけの成果の発表も予定されている。これらは、世界のHIV感染者3340万人のうちの3分の2を抱えるアフリカでの感染対策の鍵となる。

■先進国の資金援助が減少

 しかし、エイズ感染拡大の抑え込みに成功しつつあるとの楽観論は、資金面の懸念に打ち消されてしまっている。

 カイザーファミリー財団(Kaiser Family Foundation)と国連合同エイズ計画(Joint United Nations Programme on HIV/AIDSUNAIDS)によれば、貧困国のHIV/AID対策に向けられる先進国の資金援助は、2002年の12億ドル(約1000億円)から6年連続で2けた増を続けた。だが09年は、世界的な景気後退の影響で08年の77億ドル(約6700億ドル)から76億ドル(約6600億円)に減少したという。

 また、2009年に低中所得国のエイズ対策に必要な資金総額は推計236億ドル(約2兆円)だったのに対し、77億ドルが不足していた。

 この試算によると、2010年に貧困国において必要とされる資金は250億ドル(約2兆2000億円)だが、米科学誌サイエンス(Science)に掲載された分析によれば不足額は113億ドル(約1兆円)に上るとみられる。

■支援額=救済できる命の数、の現実

 こういった問題が残酷なジレンマを明るみに出している。

 今のところHIVの特効薬はないため、感染者はウイルスを抑制する治療薬を一生涯続けて摂取する必要がある。現状で1000万人がこの治療を必要としているが、こういった治療を受けることができるのはそのうちの500万人に過ぎない。つまり、救われる命の数は、提供される資金額によって容赦なく決まってしまっているのだ。

「前年、世界のリーダーたちは企業やウォール街の金融機関への支援金拠出をすんなりと即決した。それなのに、地球規模の健康の問題となると財布はいつも空っぽだ」――国際エイズ学会(International AIDS SocietyIAS)のジュリオ・モンタナー(Julio Montaner)会長はこのように述べ、エイズ対策への資金援助を渋る先進国を揶揄(やゆ)した。(c)AFP/Richard Ingham