【7月9日 AFP】オフィスや家庭から出るコンピューターやプリンター、携帯電話などの電子廃棄物が、インドの貧困地域でごみ拾いをして生計をたてる人びとの健康を脅かしている。

 国連が2月に発表した報告書によると、発展途上国の電子廃棄物の増加は著しい。特にインドの廃棄コンピューターは、2020年には07年の5倍に、携帯電話は18倍に増えると予測されている。

 ニューデリー(New Delh)にあるマウラナ・アザド医科大学(Maulana Azad Medical College)職業環境健康センターのT.K. ジョシ(T.K. Joshi)所長は、09年10月まで1年間にわたり、ごみの再生・解体に携わる人たち250人を調査し、かれらに及んでいる電子ゴミの危険性を明らかにした。

■有害物質の危険、認識されず

 まず対象となった人たちのほとんどが喘息や気管支炎に悩まされていた。血液検査、尿検査では鉛や水銀、クロムの濃度が通常の10~20倍もあった。「どれも呼吸器系、泌尿器系、消化器系に有害な影響を与えるうえ、免疫力を損なわせ、ガンをも引き起こす」物質だ。

 有毒金属や有害物質は、コンピューターなどの部品に使われている金や白金、銅、鉛といった貴金属を取り出す細かい手作業の最中に、血中に入る。

 また回収した金属は、苛性ソーダや濃酸を使って処理をするが、作業する人たちは長時間、有害化学物質をさわり、そうした液に手を浸たすことになる。気化した濃酸にもさらされる。しかし、手袋やマスクをし、換気扇を使おうという注意に耳を貸す人は少ない。さらに作業しているのは子どもが多く、自分たちがさわっているものが何かさえも分かっていない場合がほとんどだ。

 ジョシ氏の懸念は深い。「調査した作業者の全員が、自分たちがさらされている危険を意識していなかった。みんな読み書きができず、仕事を必死に探している人たちだ。かれらにとっての選択肢はただ2つ、飢えで死ぬか、金属中毒で死ぬかだ」

 電子ごみに含まれるカドミウムや鉛といった物質がもたらす結果は、非常に長い期間、痛みに苦しみながらの死だ。「35~40歳になるころにはもう働けなくなる。眠ることも歩くこともできない」

 働けなくなった人たちはたいてい故郷の村に帰ってしまうため、電子ごみの回収で中毒になって死ぬ人がインドで何人くらいいるのかに関する推計はない。

■求められるのは、労働者を守る法律

 ニューデリーを拠点とする環境保護団体「トキシック・リンク(Toxic Link)」のプリティ・マヘシュ(Priti Mahesh)氏はこう語る。「皮肉にも、金や白金といった稼ぎになる部分はほんの少し、ミリグラム単位でしかない。コンピューター、テレビ、携帯電話は、鉛、水銀、カドミウムが多く使われているので最も危険だ。おまけに使用寿命が短いので、どんどん捨てられる」

 インド政府は先ごろ、電子ごみ取引の規制法案を提出した。しかし、環境保護団体「科学環境センター(Centre for Science and Environment)」は法案の有効性に疑問を投げかける。同センターのクシャル・パル・シン・ヤダブ(Kushal Pal Singh Yadav)氏は、「この規制法案は、ごみの再生・解体を大企業だけにやらせようとしているが、それでは意味がないだろう。廃棄、回収、再生の安価で非正規なシステムは、業界としてすでに確立してしまっている。当然安いほうに人気が集まる」と指摘する。子どもたちを筆頭に、正式に雇われているわけではないごみ拾いの作業員は、一向に減らないだろう。

 ジョシ氏は次のように警告する。「インドが必要としているのは労働者、特にか弱い子どもたちを守る法律だ。労働者の権利については、インドは欧米の国々から多くを学ばなければならない」

(c)AFP/Elizabeth Roche