【7月6日 AFP】アイスランド当局は、米国出身でアイスランドで死去した元チェス世界チャンピオンのボビー・フィッシャー(Bobby Fischer)氏の遺体を掘り起こした。同氏の遺産相続問題で、実父確定検査を行うためだという。

 フィッシャー氏が埋葬されていた南部セルフォス(Selfoss)の警察本部長はAFPに対し、「遺体は今朝掘り起こされた」と明らかにし、「故人に対する敬意を持つことが大事なことだ」とした上で、「掘り起こしは、高度な技術と尊厳をもって執り行われた」と語った。

 作業には、医師や聖職者が立ち会ったが、警察本部長がこうした作業に立ち会うのは初めてだという。

 フィッシャー氏は2008年1月17日に64歳で死去し、首都レイキャビク(Reykjavik)の約50キロ東にあるセルフォス郊外の教会墓地に埋葬されていた。

 フィッシャー氏をめぐっては、フィリピン人女性が、同氏が9歳になる娘の父親だと主張しており、アイスランドの最高裁は前月、フィッシャー氏の遺体を掘り起こしてDNA検査を行うことを認めていた。

 フィッシャー氏の資産は約200万ドル(約1億7500万円)と推定されている。フィリピン人女性のほかにも、フィッシャー氏の姉の2人の息子(米国人)、同氏との結婚を宣言した渡井美代子(Miyoko Watai)氏、さらにフィッシャー氏の未納税金の回収を主張する米国政府が争っている。

 米国生まれのフィッシャー氏は1972年、レイキャビクで行われた世界選手権で当時のチャンピオンのボリス・スパスキー(Boris Spassky)氏を破った。スパスキー氏はソ連出身だったために試合は米ソ冷戦の代理戦争の様相を呈し、世界的な話題を集めた。

 フィッシャー氏はその後、1992年に国際的な制裁下にあったユーゴスラビアで試合を行い米国から指名手配され、2005年に米国への強制送還を避けるためにアイスランドの市民権を取得していた。(c)AFP/Haukur Holm