【6月4日 AFP】自動車大手ホンダ(Honda)の中国工場が前週~今週、賃上げをめぐるストライキで操業を停止した。4日から徐々に稼動を再開する見込みだが、生産ラインが止まるという前例のない事態に、日本企業は中国市場への進出計画を見直す必要に迫られそうだ。

 急成長する経済とともに中国人労働者の賃上げ要求は強まっており、コスト増大に直面する日本企業の頭痛の種となっている。その一方で、中国人労働者の所得が増えれば、高級品需要の高まりが期待できるというとらえ方もある。

■「昇給なし低賃金」に不満、ホンダが前例に?

 前月27日からストに突入していた中国工場の従業員らに対し、ホンダが24%の賃上げを提案したことで、ホンダの部品工場は2日から稼動を再開した。中国合弁事業である広汽本田汽車(Guangqi Honda Automobile)と東風本田汽車(Dongfeng Honda Automobile)の完成車工場も、4日~5日に操業再開の見込みがついた。ただ、いつからフル稼働できるかは不明だ。

 このような事態が起こることは誰も予測していなかったと、東海東京調査センターのアナリスト、加藤守(Mamoru Kato)氏。ホンダ工場のストによって中国人労働者の賃上げ要求の流れが強まる可能性は高く、そうなれば中国での生産コスト上昇は避けられないと指摘する。

 中国の労働組合の全国組織、中華全国総工会(All-China Federation of Trade UnionsACFTU)によれば、中国の被雇用者の4分の1近くが過去5年間に昇給されたことがない。

 ここ数週間には、米コンピューター大手デル(Dell)やソニー(Sony)、パナソニック(Panasonic)などの委託製造を手がける台湾系大手電子機器メーカー・富士康集団(フォックスコン、Foxconn)の中国工場で自殺者が相次ぎ、同社が生産ライン従業員の賃金を3割引き上げた。

 こうした中、中国国内で労働問題はクローズアップされており、工場労働者の労働条件を疑問視する声や、独立した労働組合運動が禁止されている中国の安価な労働力の恩恵を被る企業に対する監督強化の要求が高まっている。

 自動車業界に詳しいミズノ・クレジット・アドバイザリー(Mizuno Credit Advisory)の水野辰哉(Tatsuya Mizuno)代表は、中国経済と中国人の所得がともに伸びるにつれて、企業は今まさに戦略の見直しを迫られていると語る。

■裏に感情的なしこりも

 中国人民大学労働人事学院(School of Labor and Human Resources of Renmin university)の楊立雄(Yang Lixiong)教授は、中国国内に展開する外資系企業で中国人の昇進機会が限られている点を指摘する。「ホンダ工場の場合、経営陣の大半は日本人。現地の中国人が昇進するのは非常に難しい上、月給も低く、労働条件も良くはない」

 また、長きにわたる日中両国の対立の歴史を背景とした中国人従業員の日本人従業員に対する反感もある。今回のストでホンダの中国人従業員たちは、同じ工場で働く日本人の賃金は50倍だと訴えた。水野氏によると、中国人労働者の間には雇用側の日本企業に差別されているという気持ちが強く、「このほうがもっと感情的かつ根本的な問題で、政治的問題に発展する懸念もある」という。

 一方で、中国人労働者の賃金の上昇は、消費者でもある労働者の購買力を強化するため、必ずしもマイナス要因ではないと見るアナリストもいる。岡三証券(Okasan Securities)の藤木宏和(Hirokazu Fujiki)投資戦略部主任は、日本は価格面ではすでに周辺のライバル国に勝ち目はなく、競争できるのは高級品市場の需要に応える職人的な技術力の高さだと強調。ゆえに日本企業がターゲットとすべき層は、中間層から富裕層の消費者だと話している。(c)AFP/David Watkins