【5月23日 AFP】オーストラリアの研究者が、熱帯から温帯の広い範囲の海に生息するタコの1種、カイダコの雌が持つ殻の役割が分かったと発表した。

 カイダコの殻は、卵がある程度の大きさになるまで保護する育房(いくぼう)だというのが最も一般的な見方だったが、捕食者から身を守るには薄すぎるため、何百年も前から生物学者を悩ませてきた。

 メルボルン(Melbourne)のビクトリア博物館(Museum Victoria)の研究者、ジュリアン・フィン(Julian Finn)氏は19日、海面付近で殻の中に取り込む空気の量を調節してカイダコは海中で止まる深さを調節していることが分かったと発表した。

 フィン氏らは日本の漁師が捕まえた個体を使い、実際に日本海(Sea of Japan)に面した島根県の沖泊港(Okidomari Harbour)に潜って実験した。カイダコを持ってスキューバダイビングで海に潜り、海中で殻のなかの空気を全て出したところ、すべてのカイダコは水中に向かって移動し、殻の中に空気を取り込んでまた降りてきたという。

 他のタコと同じようにカイダコはジェット水流を噴き出して海中を移動する。水深が深くなるにつれて徐々に水圧が高まると殻の中の空気の体積が減って浮力が小さくなり、最終的に体重と釣り合うようになる。従来の実験は水槽で行われたため、この仕組みに気づかなかったのだろうとフィン氏は考えている。

 フィン氏らはカイダコにとって殻はあれば便利というものではなく必要不可欠なものだったと指摘するとともに、海岸に大量のカイダコが打ち上げられることがあるが、この原因が殻の中の空気のせいだという従来よく言われていた考えも事実ではないことが分かったとしている。

 カイダコはオウムガイと間違われることもあるが、れっきとしたタコの1種で、口の周りに吸盤がついた8本の足がある。クジラ、アザラシ、魚類、海鳥にとっては重要な餌になっている。

 雌が足から石灰質を分泌して作る紙のように薄い殻はアオイガイと呼ばれる。カイダコは4種が知られており、最大直径30センチほどにまで成長する。(c)AFP

【関連記事】道具を使うタコ、ココナツの殻を「よろい」代わりに 豪研究チーム