【5月16日 AFP】(写真追加)環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)は14日、インドの首都ニューデリー(New Delhi)で記者会見し、同市のスラム街マヤプリ(Mayapuri)地区にあるスクラップ回収所とその周辺の6か所で、通常の5000倍にあたる高レベルの放射線を検出したと発表した。

 グリーンピースの放射線専門家が、同日、会見の前に調査したところ、回収所の放射線は、防護服がなければ国内法で年間最大許容限度とされている放射線量をわずか2時間で浴びる水準だったという。回収所から20~50メートル離れた、人の往来がある場所でも強い放射線が検出され、非常に危険だとしている。

 この回収所では廃棄物から貴金属などを回収して販売しているが、デリー大学(Delhi University)が払い下げた装置に入っていた放射性物質による多臓器不全で作業員のラジェンドラ・ヤダブ(Rajendra Yadav)さん(35)が4月26日に死亡し、7人が入院した。

 ヤダブさんは得意先に見せるサンプルとして、デリー大のスクラップから回収した「光沢のある白い金属」を革の財布に入れて持ち歩いていたという。国際原子力機関(International Atomic Energy AgencyIAEA)は、過去4年間に起きた世界の放射線事故のなかで最悪の事例だとしている。

 インド原子力規制委員会(Atomic Energy Regulatory BoardAERB)は今月、デリー大が払い下げたスクラップはすでに除去され、回収所とその周辺は安全だと発表していたため、会見でグリーンピースはAERBの怠慢を強く批判した。

 インドはエネルギー源を石炭や石油から原子力に徐々に移行しようとしているが、グリーンピースの会見はインドの有害廃棄物処理と安全規制のありかたに、新たな疑問を投げかける形になった。(c)AFP/Pratap Chakravarty

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