【5月14日 AFP】米スポーツ用品大手ナイキ(Nike)が、東京・渋谷の宮下公園(Miyashita Park)を「宮下NIKEパーク(Nike Park)」に変える計画の改修工事が、反対運動の阻止によって立ち往生している。

■反対派、公園に住み着ついて抗議
 
 宮下公園はJR山手線(Yamanote Line)の線路脇にある約1ヘクタールの区立公園。高層ビルが建ち並ぶ渋谷の繁華街では数少ない緑地を提供しているが、渋谷区は数か月前、ナイキパーク計画のために公園に住んでいたホームレスの人たちを立ち退かせた。しかしその後、反対運動を行う数十人が公園内に住み着き、計画に抗議している。

 公園のフェンスには「宮下公園のナイキ化に反対」の立て看板。反対している人たちは1日のほとんどをコーヒーや紅茶を片手に過ごしながら時々公園内を見回り、工事が始まらないよう監視している。その1人、小川てつオ(Tetsuo Ogawa)さんは「営利目的のためのスポーツ施設を、1私企業であるナイキによって、公共空間である公園に建設させる区の計画に反対している」と語る。

■企業の「社会的責任」か、誰もが使える「公共空間の確保」か

 計画は3年前に持ち上がり、当初工事は前年9月に着工される予定だった。それが4月に延期され、その後も抗議運動によって阻止されている。日本国外の反グローバリゼーション運動もこの反対派を支持し、オーストラリア、フランス、タイの日本大使館前やナイキの店舗前で抗議集会などが行われた。

 地元では計画を歓迎する声もある一方、公園や橋の下に段ボールやビニールシートで覆いを作って暮らす東京のホームレスを排除する動きのひとつだという批判もある。

 一方、ナイキの広報担当は、計画は同社のCSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)活動の一環だと反論する。24時間オープンのナイキパークとして生まれ変われば今よりも安全になり、もっと多くの人に利用されると言う。区職員によると、ナイキは向こう10年間、ネーミングライツ(施設命名権)料として渋谷区に対し、年間1700万円を支払うほか、改修工事費を負担する。

 AFPの取材に対しある渋谷区職員は、老朽化のためいずれ公園は改修が必要で、ホームレスが住むことに周辺住民から苦情もあり、ナイキパーク計画は区にとってもナイキにとっても有益だと説明した。区ではホームレスシェルターへの入所支援や、ビニール小屋を近くに移動させる手伝いまでしたという。さらに、反対派の人たちが居座っているため、一般の人が公園を利用できなくなっていると腹立たしげに指摘した。

 反対している人たちには自称アーティストが多い。彼らが公園に作り出した光景を不思議そうに眺める通行人もいる。公園のフェンスには破れた傘や、上下逆さまの自転車のフレームが吊り下がる。

「アーティストの目から見ればこれもゴミじゃない」――小川さんによると、ホームレスの立ち退き後に残された家財道具などを使ったアート作品で、ナイキ化計画への反対を表現している。けれどアーティストだけではなくもっと多くの人たちに、そのスペースをオープンにしていかなければと言う。「誰でもコーヒーやお茶を飲みに来てください」(c)AFP/Harumi Ozawa