【5月9日 AFP】米南部ルイジアナ(Louisiana)州沖のメキシコ湾で起きた原油流出事故では、大量の原油が海岸に押し寄せるという事態にはまだ至っていないが、現場となったメキシコ湾(Gulf of Mexico)の海面や海底では環境破壊が進んでいると専門家は警告している。

 環境保護団体「環境防衛基金(Environmental Defense Fund」の主任海洋科学者のダグ・レイダー(Doug Rader)氏は、「関心が向けられているのはビーチや海岸沿いにある湿地帯ばかりだ。もちろんこれは十分重要なことだが、すでに影響が出ていることも忘れてはいけない」と語った。

 ルイジアナ州の自然保護当局は6日、同州沿岸にあるGrand Gosier Islands近くの漁業海域で、原油まみれになって死んでいる2羽のカツオドリを発見したと発表している。しかし、目に見える影響と同程度、もしくはさらに深刻な環境破壊が水面下では進行している。

 原油に含まれる有毒成分が、爆発した石油リグから現在も流出しており、海洋生物の幼生などとともに、潮の流れに乗って周辺海域から離れた場所にも移動している。レイダー氏は、「海面は、原油の有毒性が最も高くなり、動物たちが最も影響を受ける場所だ」「付近に生息する魚類のいまの世代を一掃してしまう可能性がある」と語った。

 当然、原油は海面上を漂って、フロリダ(Florida)や西大西洋に移動したり、メキシコ湾流などに流れ込むだけではない。原油は粒子状になって、海面から炭化水素と有毒物質が霧雨のように海底へと沈んでいく。

 原油と有毒物質の雨は海底で堆積物となり、多くの海洋生物が餌とともに摂取してしまう。専門家は、海洋生物が他の海洋生物を食べたり、鳥が汚染された海洋生物を食べたりすることで、有毒物質は海の食物連鎖から、地域全体の食物連鎖に拡大していくと警告している。(c)AFP/Mira Oberman

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