【5月4日 AFP】米南西部アリゾナ(Arizona)州で成立した不法移民の取り締まりを強化する法律をめぐり、住民たちの間で困惑の声が上がっている。

 前月23日に成立した同法は、「合理的な疑い」がある者に対して警官が職務質問することができるもので、不法移民対策としては全米で最も厳しい法律だ。

 移民問題は全米的な問題だが、連邦議会はこれまで移民法改正に合意できずにいる。そのため、推定1200万人とされる不法移民に対する対策を求める怒りの声が何年も前からあがっている。

■ヒスパニック系46万人が不法移民

 メキシコと国境を接するアリゾナ州では、人口660万人のうち30%以上がヒスパニック系。また、11%はアメリカ先住民や黒人、アジア人により構成されている。ヒスパニック系の中には米国で生まれや合法的な移民もいるが、うち推定46万人が不法移民とされている。

 フェニックス(Phoenix)市警のJ・D・シュル(J.D. Shull)交通巡査部長も、法律の施行にはあまり乗り気ではない。「住民の賛否が両極端に分かれているので難しい。われわれは厄介な立場に立たされることになる」と語った。

 シュル氏は警官歴20年のベテランだが、これまでに誰かに滞在資格について質問したことは一度もない。米国には戸籍がなく、最も近い代替物は州の発行する運転免許証になる。

■不法移民の流入盛ん、64%が移民法支持

 調査会社ラスムッセン(Rasmussen)が前週実施した調査によると、アリゾナ州の回答者の64%が新移民法を支持している。しかし、この法律により訴訟問題が頻発すると考える回答者も、半数に上った。

 新法の支持者は、アリゾナ州南部の穴だらけの国境を防衛するためにこの法律が必要だと主張する。同州の国境は、米国への不法移民が最も多い場所の1つだ。

 法律は当初、「合理的な疑い」がある人物に対し、「合法的な接触」内で警官が滞在の合法性について質問できるとしていたが、後に「合法的な接触」の部分が「制止させるか、拘束するか、または逮捕した場合」と変更された。さらに、人種「のみ」を理由に不法滞在の疑いを持つことを防止するために、条文から「のみ」の文言が削除されたという。

 ジャン・ブリューワー(Jan Brewer)アリゾナ州知事は、変更後の法律では、人種による選別を禁止していることは「明白だ」と語った。とはいえ、まだ確信を持てないでいる人も多い。(c)AFP/Jordi Zamora