【4月28日 AFP】パナマの元最高実力者、マヌエル・ノリエガ(Manuel Noriega)元国防軍司令官(76)の軍事独裁(1983~89年)下での弾圧を生き延びたパナマ国民は、ノリエガ元将軍の「遺産」に今も怒りを抑えられない。

 しかし専門家たちによると、若い世代のパナマ人がどうノリエガ元将軍を見ているのかについてははっきりしない。

 26日に米国からフランスに身柄を移送されたノリエガ元将軍は翌27日、麻薬取引に絡む資金洗浄の容疑で裁判を受けるため、パリ(Paris)の予審判事の下へ出頭した。

 独裁者であったと同時に米中央情報局(CIA)の協力者でもあったノリエガ元将軍は、軍事独裁政権に反対する者はすべて容赦なく弾圧した。しかし89年に米国のパナマ侵攻で失脚、その後米国で、麻薬密輸などで有罪となり服役し、刑期が終わった後もフランスへの引き渡し問題があったため拘束されていた。

 元将軍に対してはパナマでもそれぞれ禁固20年の有罪判決が3件下されている。パナマ政府は26日、フランスへの引き渡しについて、米国の「主権」に基づく決定を尊重するとの声明を発表したが、フランスでの結果がどうあれ、最終的にはパナマに本国送還し刑に服させるとの点は決して譲っていない。

 それでもノリエガ政権時代、反軍事政権デモに参加したエンジニアのカルロス・リナレス(Carlos Linares)さんは、外国で元将軍が服役するのを見るのは満足だと語る。「ノリエガには遠くにいてもらったほうがいいくらいだ。そのほうが、この国を壊した報いにひとりで向きあわざるをえないだろう」

 しかし若い世代になるとノリエガ元将軍に対する関心は薄らいでいると、社会学者のラウル・レイス(Raul Leis)氏は指摘する。政府統計によるとパナマは現在人口の30%が15歳未満という若い国でもある。「国民の大多数にとっては、大昔の歴史の話でしかない。(独裁政権は)もう20年前のことだから多くの人、特に若者にとってノリエガ元将軍は過去の亡霊、軍隊をもたない将軍だ」

 ノリエガ元将軍はなんの政治運動を立ち上げたわけでもなく、政治哲学を残したわけでもなかったとレイス氏は言う。「彼が指導者であったことなど一度もない。単なる独裁者だ。多くの国民が彼は当然の報いを受けていると思っている」(c)AFP/Sailendra Sail