【4月15日 AFP】中央アジア・キルギスの政変で事実上失脚したクルマンベク・バキエフ(Kurmanbek Bakiyev)大統領が逃亡した同国南部オシ(Osh)で15日、同大統領が支持者集会で演壇に上がろうとしたところ、自動小銃が発砲された。

 発砲があったのは、集まった約2000人の支持者を前にバキエフ大統領が演説しようとした直前だったが、インタファクス(Interfax)通信はバキエフ大統領の護衛隊が空砲を撃ったものだったと報じている。

 AFPの特派員によると、集会場所から数百メートルしか離れていないところで、暫定政府の支持者たちも集会を行っていた。

 パニックに陥り、集会の広場から逃げようとする群集に対し、バキエフ大統領は「走らないで、走らないで!」と叫んだという。目撃者によると、大統領自身は劇場に避難し、数分後に車で現場から離れた。

 両派の対立が深まる中、暫定政権首班のローザ・オトゥンバエワ(Roza Otunbayeva)元外相は14日、バキエフ大統領に対していかなる妥協もしないと宣言し、反政府デモを「流血の事態」に陥らせたとして大統領を裁判にかけるべきだと主張した。
 
 失脚した大統領は13日、自分と家族の身の安全が保証されることを条件に、辞任を受け入れると表明した。しかし、オトゥンバエワ氏はこの条件をはねつけ、大統領だけではなく親族や側近も裁判を受けるべきだと述べた。

 ただし暫定政府周辺からは、バキエフ大統領に対してはいかなる特殊作戦も予定されていないと強調する声も聞こえている。

 財政援助を含めて暫定政府支持を表明しているロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)首相は、84人が死亡した騒乱後初めてバキエフ大統領と電話会談した。プーチン首相の報道官ドミトリー・ペスコフ(Dmitry Peskov)氏はAFPに対し、14日夜に会談があったということ以外は明かしていないが、ロシア側からバキエフ氏に辞任を迫る圧力がかかったと憶測しうる状況だ。

 一方アフガニスタンでの作戦拠点としてキルギス国内に基地を擁している米国は、ロバート・ブレイク(Robert Blake)国務次官補(南・中央アジア担当)を14日に米高官として初めて政変後のキルギスに派遣し、やはり暫定政府に支援の用意がある旨を伝えた。ただし米国務省では、キルギスの民主化を望むもののバキエフ大統領側にも暫定政府側にも立たず、「平和裏に解決することを望みつつ、事態の推移を見守る」方針を強調した。(c)AFP/Matt Siegel