【4月15日 AFP】近年、原発への侵入やウラン密売などの核関連の保安体制侵害事件が相次ぎ、世界各国が保有する核物質の安全性に関して懸念が高まっている。バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領が提唱し47か国が参加して、12~13日にワシントンD.C.(Washington D.C.)で開かれた核安全保障サミットでも、兵器級のウラニウムとプルトニウムの保護に関して注目が集まった。

 以下は、各国政府や核拡散について研究を行っている米ハーバード大学(Harvard University)ベルファーセンター(Belfer Center for Science and International Affairs)などの報告を元に、最近20年で発生した核関連の事件をまとめたもの。

―1993年、カザフスタン国内で、原爆20個分にも相当する大量の高濃縮ウランが警備が手薄な状態で発見される。同地域では、イラン、イラク両国が貿易を開始していた。米国はこの濃縮ウランを引き取り、テネシー(Tennessee)州オークリッジ(Oak Ridge)に現在も保管している。

―1998年、ロシア当局は、同国チェリャビンスク(Chelyabinsk)州にある大規模核施設で、複数の職員が18.5キロの兵器級ウランを盗もうとしていたと発表した。

―2000年、グルジアの警察当局は、920グラムの高濃縮ウランを所持していた同国人4人を逮捕した。

―2002年、米露当局は、セルビアの首都ベオグラード(Belgrade)郊外で、原爆3発を製造するのに十分な量の高濃縮ウランを押収した。

―2003年11月、ロシアの原子力砕氷船団を管轄するアトムフロート(Atomflot)の職員が、核物質または放射性物質を不法所持していたとして、18月の有罪判決を受けた。この職員は、「イエローケーキ」と呼ばれるウラン粉末を1キロ以上所持していたとして逮捕されていた。一部報道によると、このイエローケーキはウランと、ラジウムもしくはトリウムとの混合物だったとされている。

―2004年、「パキスタンの核開発の父」アブドル・カディル・カーン(Abdul Qadeer Khan)博士がテレビで、イラン、リビア、北朝鮮への核技術供与を告白。博士はその後、この発言を撤回した。

―2006年、高濃縮ウラン100グラムを所持し、それ以上の量を売却しようとしたロシア人の男がグルジアで逮捕される。

―2007年9月、イスラエルが、シリア政府が使用していない軍施設と主張する場所を空爆。米国は後に、その場所はシリア政府が北朝鮮の協力を得て秘密裏に建設した軍事目的の原子炉だったと指摘した。シリアは、核兵器開発計画や北朝鮮との協力関係について否定し、北朝鮮も同様に否定した。

―2007年11月、南アフリカ・ペリンダバ(Pelindaba)の原子力研究施設が武装した集団に襲撃された。同施設内には、核兵器30個分の高濃縮ウランが保管されていた。武装集団は、1万ボルトのフェンスや警報装置が設置されていたにもかかわらず施設内に侵入していたことから、施設内部に協力者がいた可能性もある。武装集団は45分間にわたって施設内にとどまり、非番の職員1人に発砲した。その後、ウランには手をつけずに逃走した。

―2008年、米空軍の内部調査で、北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty OrganisationNATO)の加盟国内にある戦術核兵器の保管施設のほとんどが、米国の保安基準を満たしていないことが明らかになった。

―2010年2月、米軍の核兵器10~20個が保管されていると見られるベルギー北部のクライネ・ブローゲル(Kleine Brogel)空軍基地に、6人の反核活動家がフェンスを乗り越え侵入。基地内を1時間以上歩きまわった後、逮捕された。(c)AFP