【4月12日 AFP】仏野生動物保護団体「ウータン(Hutan)」は11日、マレーシア東部ボルネオ(Borneo)島のサバ(Sabah)州で、絶滅の危機にひんしているオランウータンが、近親交配を避けて新たな繁殖相手を見つけるために、樹木の上に設置された人工のロープ橋を使用している様子の撮影に成功したと発表した。

 マレーシアやインドネシアのオランウータン生息地は、企業による伐採やプランテーションへの道路建設などで森林破壊が進んでいることから、壊滅的な打撃を受けている。こうした状況から、オランウータンは小集団に分割され、近親交配の危険にさらされている。このまま森林伐採が続けば、野生のオランウータンは20年以内にほぼ絶滅する可能性があるといわれている。

 環境保護団体などは、オランウータン保護のため、2003年からボルネオ島内に人工のロープ橋を6か所に設置していた。

 ウータンのイザベル・ラックマン(Isabelle Lackman)氏は、「われわれは何年も前から、オランウータンがロープ橋を渡っているところを目撃したという地元住民の証言を得ていたが、写真によって確認されたのは今回が初めてだ」と語った。

 ラックマン氏によると、写真は今年2月にサバ州のキナバタンガン下流域野生生物保護区(Lower Kinabatangan Sanctuary)で地元住民によって撮影されたもので、若い雄のオランウータンが全長20メートルの1本のロープで作られたロープ橋を渡っている姿が映されている。

 専門家によると、野生のオランウータンの生息数は約5万~6万頭で、うち80%がインドネシアに、残りがボルネオ島のサバ、サラワク(Sarawak)両州にいる。

 ウータンによると、オランウータン保護活動が成果をあげている証拠だとしているが、ロープ橋はあくまでも「緊急措置」で、オランウータンが分割された生息地や川沿いの土地を横断できるような「回廊」の建設を訴えている。

 サバ州の環境保護当局は、恒久的な回廊を建設することは、多額の費用と長い時間を必要とするとしながらも、ボルネオゾウやマレーグマ、ウンピョウなどのオランウータン以外の動物の保護にも効果があるとしている。(c)AFP