【3月29日 AFP】枢機卿時代に米国の神父の児童性的虐待をもみ消したとの疑惑が前週報じられたローマ法王ベネディクト16世(Benedict XVI、82)は28日、復活祭前の「しゅろの日曜日(Palm Sunday)」のミサで、信者らに流言に惑わされないよう呼びかけた。

 バチカンのサンピエトロ広場(St Peter's Square)で行われたミサで法王は、相次ぐカトリック聖職者による児童虐待疑惑について直接言及することはなかったが、「イエス・キリスト(Jesus Christ)は、流言を通じた脅しに立ち向かう勇気を持つように、われわれを導いてくださる」と述べ、暗にスキャンダルに屈しない姿勢を示した。

 カトリック教会では最近、聖職者による児童虐待スキャンダルが相次いで発覚している。前週25日には米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)が、法王がバチカン教理省(Congregation for the Doctrine of the Faith)長官時代に米国の神父による児童性的虐待疑惑を報告する書簡を受け取りながら、何の対処もしなかったと報じた。

 これを受けて有識者の中には、法王の退位を求める声も出ており、バチカン法王庁のフェデリコ・ロンバルディ(Federico Lombardi)広報局長が27日、スキャンダルによって法王の権威が弱まることはないと述べるなど、バチカンは対応に追われている。

 2000年におよぶローマ・カトリック教会の歴史のなかで、在位中に退位した法王は1294年のケレスティヌス5世と1415年のグレゴリウス12世の2人だけだ。(c)AFP/Gina Doggett