【3月17日 AFP】カタール・ドーハ(Doha)で開催中のワシントン条約締約国会議(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and FloraCITES)で、ザンビアとタンザニアが自国の在庫象牙の1回限りの販売を認めるよう求めているが、専門家らによると、アジアの犯罪組織が絡んだ象牙の闇取引が活発化していることから、認められない可能性がある。

 2007年の前回会議では、アフリカゾウの象牙国際取引を9年間禁止することが合意され、翌08年から発効した。

 このとき、政府が保管する在庫象牙に限って1回限りの取引が認められ、08年に南アフリカ、ボツワナ、ナミビア、ジンバブエの4か国で中国と日本に対する象牙の競売が行われた。総売上高は1540万ドル(約14億円)。競売の目的は、売上金すべてを環境保護に充てるとともに、違法な象牙の価格を押し下げ、密輸を減少させることにあった。

 しかし、アフリカ中部を中心に密猟者によるゾウの殺害件数が急増するという皮肉な結果を招き、在庫象牙の競売を例外的に認めることの意味を問う声が高まっている。

 ゾウの殺害件数は、ケニアでは07年に47頭、08年に145頭、09年には234頭と大幅に増えた。コンゴ民主共和国では、殺されたゾウが2か月間で数百頭にのぼった。チャドでは、自然界に存在する象牙の本数が05年の3885本から09年末の617本へ激減した。   

■軍隊化する密猟者組織

 動物保護団体「国際動物福祉基金(International Fund for Animal WelfareIFAW)」によると、こうした国々において密猟者は武装するようになっているという。

 前年12月には、密猟者80人がスーダン経由で中央アフリカに入り、36頭のゾウを殺害したのちにコンゴとカメルーンに移動したという情報がある。彼らは重火器を携行し、「ゾウを射つ者」「象牙を切り取る者」「象牙を運搬する者」の3つの隊に分かれていたという。

 象牙は、強力な酸を使ってゾウの肉を溶かすという方法で抜き取られていた。 
 
■中国にマフィアの影

 アジアへの象牙の密輸に対してアジアの犯罪組織が関与を強めていることを示す証拠があると、野生動物取引の監視団体「トラフィック(TRAFFIC)」の監視員は言う。

 ワシントン条約締約国会議に参加しているアフリカの一部の代表者らも、中国のバイヤーたちとのつながりを持つマフィア並のネットワークの存在を指摘した。

 今回の会議で、在庫象牙の販売許可を求めているザンビアとタンザニアだが、アジアで押収された象牙のDNA鑑定で、違法象牙の主な出どころにこれら2か国が含まれていることも明らかになっているという。(c)AFP/Anne Chaon