【3月16日 AFP】科学捜査官は近い将来、手に付着した細菌により、犯人や被害者を特定できるようになるかもしれないとする研究結果が、15日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。
 
 コロラド大学ボルダー校(University of Colorado at Boulder)の研究チームは、パソコンのキーボード3台ですべてのキーを綿棒でふき取り、そこから細菌のDNAを採取。この結果を、それぞれのキーボードを使用する3人の指先の細菌と比較した。

 また、この3人が使用したことのない私用または公用の複数のキーボードでも細菌を採取し、3人の手の細菌と重複していないかを調べた。

 その結果、各自の指の細菌は「その人特有」のものであり、一度も使用しなかったキーボードに付着した細菌よりは実際に使用したキーボード上の細菌の方に極めて近いことが分かった。

 研究チームは、さらに、12時間以上触られていないパソコンマウス9個に綿棒をこすりつけ、次にマウスの持ち主の手のひらから細菌を採取した。

 それぞれのマウスのバクテリアは、持ち主以外の270人の手から採取された細菌よりも、持ち主の手から採取された細菌の方に「極めて似ている」ことが明らかになった。

■生命力の強さも有利

 手には細菌が大量に付着しており、これらの一部が手から離れたとしても、その生命力は非常に強い。手のバクテリアのコロニーは、室温では2週間そのままの形で生き残り、手を洗っても数時間後には再生するという。

 一方で、布地などに付着した指紋は不鮮明だったり、採取できない場合がある。

 血液、組織、精液、だ液などが対象物に残されていない場合、法医鑑定を行うのに十分なDNAの採取ができないことが多い。

 研究チームは、「皮膚に付着した細菌の細胞が莫大(ばくだい)な数に上ることを考慮すると、当事者が触れた表面からは人のDNAよりも細菌のDNAを回収する方が容易である可能性がある。しかし実際そうなのかは、今後の研究で確認される必要がある」と指摘している。(c)AFP