【3月14日 AFP】脳の活動をスキャンすることで、その人が考えていることを知ることができるという研究結果が、11日の米科学誌「カレント・バイオロジー(Current Biology)」(電子版)に掲載された。

 ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College LondonUCL)のエレナー・マグワイヤ(Eleanor Maguire)氏らは、「機能的磁気共鳴画像装置」(fMRI)を用いて、ひとつひとつの記憶と関連した脳活動を特定することができ、さらに、それをもとに思考のパターンを特定できることをつきとめた。この研究結果は、人が過去の記憶のうち、どの記憶を呼び起こしているかを、脳活動のパターンだけで特定することができることを示唆している。

「脳の海馬において、ぞれぞれの記憶が異なった形で表されていることをつきとめた。記憶のありかをつきとめたので、今後は、記憶が保管される方法や、記憶の時間経過による変化について調べることができるだろう」(マグワイヤ氏)

 研究は、被験者10人に対し、3本の短編映画を見せたあとで脳をスキャンした。3本の映画はよく似たごくふつうの生活の場面を撮影したもので、別の女優が出演していた。

 映画を見た後、被験者はそれぞれの映画を思い出すよう促され、その際に脳のスキャンが行われた。研究者らは、スキャン結果にコンピューターで画像化処理を行い、それぞれの映画の記憶に対応する脳活動のパターンを識別した。

 その結果、脳の画像パターンから被験者が3本の映画のうちのどの映画を想起しているか、正確に特定できたという。

 報告書は、脳に残されたエピソード記憶の痕跡は、何度も再活性化された後にも特定可能であることを示唆していると結論づけた。

 今回の研究結果は、脳の活動をもとにその人が見ている画像を特定することができたとする2008年の米研究の結果を補強するものとなった。(c)AFP