【2月26日 AFP】調教師の女性(40)がシャチに襲われ死亡した事件があった米フロリダ(Florida)州オーランド(Orlando)のマリンパーク「シーワールド(SeaWorld)」は25日、このシャチを今後も飼育していくことを明らかにした。

 1991年以来2人を死なせた「過去」を持つティリクム(Tilikum)という名前のこのシャチは、24日のショーの最中に突然飛び出してこの調教師のポニーテールをくわえ、水の中に引きずり込んだ。

 同僚らがただちに救助しようとしたが、シャチが非常に興奮していたため水中に飛び込むことはできなかった。そのためシャチを小型のプールに誘導し、その巨体を台に乗せて引き上げ、シャチのあごから女性の死体を解放したという。検視の結果、死因は外傷性ショック死と水死の両方だった。女性はシャチの調教歴16年のベテランだった。

 この小型プールは1999年7月、ティリクムのそばで、引きずられ打ちつけられたような無数の傷がある男性のはだかの遺体が発見された場所でもある。男性は閉園後、海の動物たちと泳ごうとしてプールに忍び込んだと見られる。

 シーワールド側は、体長6.7メートル、体重5.4トン、時価数百万ドル(数億円)のこのシャチと「今後も付き合っていく」と明言したが、ショーに出演させるかについては言及しなかった。

■海に帰すべきなのか?

 イルカの元調教師、ラス・エレクター(Russ Rector)氏は、シャチは飼育下に置くとより強暴になる可能性があると指摘する。同氏は2007年11月、飼育下で厳しい訓練を課され続ける海洋哺乳類は、いずれ飼育員を攻撃して殺すことになるかもしれないと警告する書簡をシーワールドに送っていた。そして今、「ティリクムがこのままパークにとどまると新たな犠牲者が出るだろう」と危惧(きぐ)している。 

「彼は怪物だ。飼育の産物だ。彼は人を憎んでいる。殺すことを唯一の喜びとしている。もしこれが大型ネコ科動物やクマならば、最初の犠牲者が出た時点で始末されていたことだろう」

 海洋哺乳類は海に放すべきというのは国際動物愛護団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会(People for the Ethical Treatment of AnimalsPETA)」も同じ意見だ。同団体はシーワールドに対し、海洋哺乳類を「バスタブ」のような狭い場所に閉じ込めるのではなく、海に帰してやるべきだと呼びかけた。そして、代わりに海の生物の「巨大ロボット」を置くことを提案している。

 しかしながら、海に帰すことは、27年間飼育状態にあったティリクムのような動物にとっては困難なことかもしれない。(c)AFP