【2月25日 AFP】形式を重んじる日本と、単刀直入に物を言う米国が相対したらどうなるのか――。トヨタ自動車(Toyota Motor)の大規模リコール問題で24日、豊田章男(Akio Toyoda)社長が出席して行われた米下院公聴会は、主題は「トヨタ車の安全性」だが、異文化コミュニケーションのケーススタディーとして見ることもできるだろう。

■感情をあらわにする議員ら、冷静なトヨタ幹部

 米国で40人近くの死者を出したアクセルペダルなどの不具合について、下院議員らは数時間にわたり、資料をふりかざし、豊田社長と米国トヨタ販売の稲葉良睨(Yoshimi Inaba)会長兼CEOを指さし、そして時々語気を荒げながら、トヨタ側を責め立てた。共和党のジョン・ミカ(John Mica)議員などは、「トヨタは全くひどいことをやってくれたもんだ」と感情もあらわに叫んだ。日本ではなかなか見られない光景だ。

 これに対し、豊田・稲葉両氏は、トヨタ車の安全性に関する顧客の不安について「大いなる責任を感じる」と英語で述べ、終始冷静な態度で証言を行った。

■「温度差」が新たな火種に?

 米シンクタンク、マンスフィールド財団(Mansfield Foundation)で日本を専門に研究するウェストン・コニシ(Weston Konishi)氏は、公聴会で垣間見られた「大きな認識のずれ」を次のように説明した。

   「単刀直入な質問は、日本では非難や攻撃と受け止められかねない。一方、日本特有の形式ばったアプローチは、米議員の一部に余計な不安の種を植えつけたかもしれない」

  コニシ氏はまた、日米の隔たりは公聴会を取材するメディアの視点にもあると指摘する。米メディアが「市民の安全」をめぐる問題として報道するのに対し、日本メディアはより「(米国の)陰謀」の可能性に光を当て、「トヨタ・バッシング」「ジャパン・バッシング」とする見方さえある。

■日本の「謙虚さ」、不誠実と取られる危険性も

 一般的に、米国人を「内気」だと考える人は非常にまれだ。米政治における「24時間報道」の文化が、国会議員の厳しい態度を助長しているとも言われる。

 日本人はと言うと、個人が全体の責任をとって謝罪し、「深々としたお辞儀」に代表されるような謙虚さを示すのが通例となっている。

 しかし、米マサチューセッツ工科大(Massachusetts Institute of TechnologyMIT)の文化人類学者、イアン・コンドリー(Ian Condry)氏は、日本人のそうした「謙虚な態度」がもたらす危険を、次のように説明する。「議会に敬意を示し、遺憾の意を表明したつもりでも、心底からそう思っているのではないと受け止められてしまうかもしれない」

 コンドリー氏は、公聴会を見て文化の違いというよりは「外圧」という言葉を思い浮かべた日本人もいたかもしれないと付け加えた。(c)AFP/Shaun Tandon