【2月23日 AFP】一般的に病気は薬で治すものだ。だが、医師の患者への気遣いや知恵だけで治る場合もあることを指摘したオーストラリアの科学者らによるプラシーボ(偽薬)の研究結果が19日、英医学誌ランセット(Lancet)に掲載された。

 シドニー大学(University of Sydney)のダミアン・フィニス(Damien Finniss)氏が主導する国際研究チームは、新薬の有効性を試すために治験で用いられてきたプラシーボの効果を科学検証した論文を、古くは18世紀までさかのぼって調べた。

 その結果、プラシーボには薬を投与するといった初歩的な医療行為などと同様の治癒効果があることが分かった。患者の精神に働きかけることで、体が持つ自然治癒力を高めるとみられる。

 プラシーボ効果は、さまざまな症状の患者において習慣的に投与することで得られ、強い治癒効果があることが分かったという。

 研究チームが検証した論文のなかには、鎮痛剤を投与されていた患者が、投与薬がプラシーボに切り替わってからも鎮痛効果を得ていたことが脳スキャンから確認された例が多数あったという。

 また、薬をコンピューター制御式ポンプで投与するよりも、医師が注射した方が効果的であることが分かった。

 フィニス氏は、AFPの取材に対し、「プラシーボ効果を得るために、偽薬を投与する必要はない」とし、重要なのは治療のあり方だと説明した。一方、ほとんど医師を信頼しようとしない患者の場合についてフィニス氏は「仮説としてだが、プラシーボ効果はあまり得られないだろう」と語った。(c)AFP