【2月18日 AFP】フランス政府が1960年代の核実験で、仏軍兵士たちを意図的に被爆させて放射能の人体への影響を調査していたことが、AFPが16日に入手した軍事機密報告書で明らかになった。

 この報告書によれば、フランスは1960~66年にかけて、「核兵器が人体におよぼす生理的、心理的影響を調査する」ため、アルジェリアの砂漠に設置された実験場に軍部隊を派遣していた。

■核爆発直後の砂漠で穴掘り

 1961年に行われた実験では、核爆発の発生から1時間以内に、爆心地からわずか数百メートル離れた地点を、兵士に徒歩やトラックで進ませたという。また、兵士たちは軍支給のブーツと肩マント、手袋、簡単なフェースマスクだけを渡され、放射能に汚染された砂漠に45分間にわたって穴を掘るよう指示された。

 報告書は「爆心地から800メートル以上離れた地点や放射性降下物の降下範囲外では、兵士たちが肉体的に戦闘可能であることが、調査結果から明らかになった」としている。この実験は、兵士の肉体面、精神面の訓練法や核爆発の際に身を守る方法を開発する目的で実施されたという。

 フランスのエルベ・モラン(Herve Morin)国防相はAFPに対し、フランスが実施したすべての核実験の放射能レベルについて「透明性」を確保すると語った。

 今回の報告書は1998年に作成されたもの。モラン国防相によると、国防省は2007年、アルジェリアで実施された「戦略的実験」の概要をまとめている。

 フランスのマルセル・ジュリアン・ド・ラ・グラビエール(Marcel Jurien de la Graviere)核安全特使はニュース専門チャンネルiTeleに対し、この機密報告書には「新事実も深刻なこともまったくない」とした上で、(核実験被害者への補償金を支払う法律が)これらの兵士にも適用されると語った。グラビエール氏によれば、これらの「戦略的実験」については、07年にアルジェリアの首都アルジェ(Algiers)で行われた会議の広報資料ですでに明らかにされているという。(c)AFP


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