【2月12日 AFP】北京の会社員、ジャン・フイさん(26)は、4年前に大学を卒業して以来、女性とデートをしたことがない。けれどインターネットの力で、今年はこれまでとは違うバレンタインデーにならないかと期待している。

 ジャンさんが出会い系サイトに登録し、サイバー上での恋人探しを始めたのは3か月前。現在中国ではジャンさんのような若者数百万人が、テクノノロジーの進化によってもたらされた新たな「恋愛生活の自由」を謳歌しようとしている。

 農村部の湖北(Hubei)省から上京したジャンさんは数年前まで、将来の伴侶は仲人慣れした親戚たちが決めてしまうのだろうと思っていた。しかし今は違う。会員数2200万人を誇る出会い系サイト「世紀佳縁交友網(jiayuan.com)」に毎日ログインし、コンピューターが勧めてくる自分と合いそうな組み合わせをざっと閲覧していく。理想の女性はまだ見つかっていないが、まだまだ希望はもてるという。


■大きく変化した出会いのルート
 
 北京のコーヒーショップにたたずみながら、モバイル・コンピューターでその日の検索を続けるジャンさんいわく「北京だけで200万人の会員はいると思うから、半分の100万人は女性だろう。3年間ここに住んでいるけれど、こんなにたくさんの女性と会う方法はありえないですね」。

 通常の利用は無料で、特別な機能を選んだ場合にだけ課金されるこうした出会い系サイトは、中国の異性との出会いを大きく変えたと、利用者も専門家も口をそろえる。

 出会い系サイト隆盛の理由について「1980年代に生まれた世代が30歳にさしかかり、結婚のプレッシャーを感じている」と言うのは、中国民生部管轄下の公共団体、中国社会工作協会(China Association of Social Workers)で交際・紹介ビジネスを専門とするXie Qingqing氏だ。「現在の中国の若者にとって、オンライン・デートは最も一般的な出会いのルートとなっています」

 北京を拠点とするインターネット市場調査会社アイサーチ(iResearch)の2008年の報告書によると、同年4400万ドル(約40億円)規模だった中国のオンラインデート市場は、2011年には1億ドル(約90億円)を超える急速な拡大が予測されている。


■ネットワーク広がらない大都市の地方出身者

 大学生から貧しい移住労働者まで、より良い機会をつかむために地方から大都市にやって来た何百万もの人びとは、実際には狭い範囲の友人や同僚の輪にしがみつくしかないのが現状だと、前述の学生ジャンさんは状況を説明する。故郷のおせっかいな世話焼きたちから逃れたはよいが、無数の人間がいる都会の中で、矛盾しているようだが、孤立してしまうのだと言う。

 そうした孤独感が、男女ともに結婚と出産へのプレッシャーが強い中国社会の特徴と相まって、多くの人を出会い系サイトに駆り立てているようだ。

 小龍女(Gong Haiyan)さんも何年か前にそんなプレッシャーを感じた1人だった。小さんもやはり湖南(Hunan)省出身で、当時は上海(Shanghai)の大学でジャーナリズムを専攻する大学院生だった。最初はソーシャルネットワーキングサービス(SNS)に望みをかけたが、すぐにそのネットワークの限界に幻滅した。そこで自ら創設したのが、先の「世紀佳縁交友網」だ。

 現在では「400万人の縁組み達成」を誇る業界のリーダー的サイトに成長したが、なによりも彼女にとって大きかった「事件」は、2004年にこのサイトを通じて現在の夫と出会ったことだ。「知り合ってから結婚するまでは、たった2か月。あっという間でした」と小さんは振り返る。

 中国では昔から男子の誕生をより好む傾向があり、そのため生まれてくる新生児が女児だと判明した場合に集中して中絶が行われ、問題になっている。こうした男性と女性の人口の不均衡から、2020年には結婚したくてもできない男性が2400万人に上るとも予測されている。

「世紀佳縁交友網」の会員登録数にもこの性別の差は反映されており、60%は男性会員だ。ただし小さんは、この差は中国では男性のほうが、女性よりもIT技術に強いからだと考えている。(c)AFP/Dan Martin