【2月4日 AFP】米国が台湾への総額64億ドルの武器売却方針を発表したことで、米中関係の緊張が深まっているが、米国の決定の背景には台湾でも中国でもない第3のターゲットがあると、米当局者や専門家らは指摘している。――米国の軍事力の「傘」に関心のあるアジア諸国だ。

 バラク・オバマ(Barack Obama)政権は、台湾への武器輸出は、中国が軍事費を増大させる中で台湾海峡(Taiwan Strait)のパワーバランスを維持するためと説明した。

 だが、米政府当局者や専門家は、主要な理由ではないものの、オバマ政権の狙いの中には、中国との間でさまざまな問題を抱えるアジア地域のパートナー諸国に安心感を与えるという目的があると見ている。

 長年にわたって中国の軍備増強に懸念を示してきた日本は、鳩山由紀夫(Yukio Hatoyama)首相が米軍普天間飛行場(Marine Corps Air Station FutenmaMCAS Futenma)の移転見直しを表明するなど、駐留米軍をめぐる議論の真っ最中だ。

 また、米国は韓国にも、対北朝鮮防衛のため米軍約2万8500人を駐留させており、右派の李明博(イ・ミョンバク、Lee Myung-Bak)大統領とは良好な関係を築いているものの、同国内にはやはり米軍への批判の声がある。

 外交筋によると、東南アジア諸国は米軍を支持することに関して慎重な姿勢を取っているが、一部の政府は、中国の影響力拡大を踏まえ、日米関係の行方に懸念を示しているという。

 戦略国際研究センター(Centre for Strategic and International StudiesCSIS)のラルフ・コッサ(Ralph Cossa)太平洋フォーラム(Pacific Forum)所長は、「もし米国が譲歩し、台湾への武器売却を中止していたら、アジアにおける米国のコミットメントに対する同盟国や東南アジア諸国の信頼は完全に崩れ去っていただろう」と指摘する。

 その上で「こうした国々に、立ち上がって拍手をしてもらうことを期待してはいけない。だが、彼らも米国が中国に屈しなかった姿を見て、ちょっとだけ枕を高くして寝られるはずだ」と語った。(c)AFP/Shaun Tandon