【1月26日 AFP】コロンビアの麻薬王、故パブロ・エスコバル(Pablo Escobar)と、エスコバルの指示により殺害された要人の子どもたちが対面する映画が、現在開催中のサンダンス映画祭(Sundance Film Festival)に出品されている。

 フアン・パブロ・エスコバル(Juan Pablo Escobar)から名前を変えた、エスコバルの息子セバスチャン・マロキン(Sebastian Marroquin)氏は、父親の生涯を映画化したいというハリウッド(Hollywood)のオファーを数十回断ってきた。しかし今回ついに、ニコラス・エンテル(Nicolas Entel)監督がメガホンを取ったドキュメンタリー『Sins of My Father(我が父の罪)』で、マロキン氏がその胸中を語っている。

 マロキン氏の説得に半年を要したというエンテル監督によれば、マロキン氏はこれまで、エスコバルの名前を利用し、ギャングの生涯を美化しようとしたハリウッドのオファーを50回以上断ってきたという。

 1993年にエスコバルは銃弾に倒れ、マロキン氏は16歳にして、改名して母親とともにアルゼンチンに移住することを決めた。

 現在では30代となり建築家として働くマロキン氏だが、父親に対する愛と、一部の推測では数千人と言われる人たちの殺害を命じたエスコバルの残忍な犯罪に対する嫌悪感の間で揺れ動く姿を、映画はとらえている。

 エンテル監督によれば、マロキン氏が穏やかに見えるのは怒る権利を失ってしまったからだという。

 監督は、「もしわたしがいたずらをされれば、『殺してやる』と言える。言葉のあやだとわかってもらえる。しかし、セバスチャン(・マロキン氏)がそんなことを言えば、翌日の新聞にパブロ・エスコバルの息子が誰かを殺すと脅迫したと書かれることを彼は知っているんだ」と語る。

 このドキュメンタリーでは、エスコバルの命令で殺害されたコロンビアのロドリゴ・ララ・ボニラ(Rodrigo Lara Bonilla)元法相と、ルイス・カルロス・ガラン(Luis Carlos Galan)元大統領候補の子どもたちと和解しようとするマロキン氏が描かれ、クライマックスでついに彼らが対面する。

「わたしにとっては、新しい世代である子どもたちにフォーカスを当てることが非常に重要だった」(エンテル監督)

(c)AFP/Romain Raynaldy