【1月22日 AFP】沖縄の米軍普天間飛行場(Marine Corps Air Station FutenmaMCAS Futenma)の移設問題で、日本政府が移設先候補地として検討している米領グアム(Guam)で、住民らの間で負担増加への懸念が高まっている。

 2006年の在日米軍再編をめぐる日米合意で、沖縄に駐留する米兵約8000人がグアムに移転することが決まった。兵士の家族を含め、グアムは1万9000人近い米軍関係者を受け入れることになる。グアム駐留の米軍の規模は約3倍に膨れ上がる。

■島の3分の1が米軍基地

 グアムのフェリックス・カマチョ(Felix P. Camacho)知事は、再編に伴う雇用増加などで「空前の経済成長が約束されている」と歓迎。グアム選出のマドレーヌ・ボルダージョ(Madeleine Bordallo)下院議員も、グアム経済の活性化につながるよい機会だと受け入れを前向きに捉えている。

 だが、誰もが歓迎ムードなわけではない。

 現在、グアム全土549平方キロの3分の1を米軍用地が占め、米政府はさらに890ヘクタールを軍用地として購入する意向を示している。しかし米国防総省が作成した環境への影響に関する報告書は、軍備拡張で島のインフラや医療、自然環境への負担は増加すると指摘する。

■「われわれの島なのに」と先住民たち

 グアムの総人口17万8000人の3分の1を占める、先住民チャモロ(Chamorro)の人々は、「米軍増強は、われわれが現在甘んじている政治的立場とあいまって、先祖代々受け継いだ文化と民族の誇りに対するジェノサイド(大虐殺)をもたらす」と、移転に強く反対している。

 グアムは19世紀後半まで200年間以上スペインの支配を受け、その後、米国の植民地となった。第二次大戦中には日本が占領支配していた。チャモロが民族の自決権を失って久しい。

「グアムはチャモロの島だ。先祖の遺跡も、聖地も、われわれの飲むべき水も、文化も、民族としての生存権さえ破壊されてしまう」と、チャモロの民族団体「Chamorro Tribe Inc.」のフランク・J・シャチャー(Frank J. Schacher)会長。

 米軍移転に反対するチャモロの1人は、移転がグアムの幅広いコミュニティーに受け入れられているという意見は虚偽だと主張した。「みんな、総人口が賛成者の人数だと、だまされているんだ」

 国防総省の担当当局は、繰り返し市民集会を開き、説明に務めている。だが、地元民らの疑念は払しょくされていない。「集会に参加するなんで時間の無駄だね。どうせ軍はわれわれの意見なんて聞きやしない。好き勝手にやるだけさ」(c)AFP/Mar-Vic Cagurangan