【1月12日 AFP】ヨルダン政府が、カナダで展示されていた死海文書(Dead Sea Scrolls)について、イスラエルが1967年の6日間戦争(第3次中東戦争)の際に「強奪」したものだとして、国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)に苦情申し立てを行っていたことが分かった。ヨルダン政府関係者が11日、明らかにした。

 ヨルダン側は、イスラエルが1967年に東エルサレムを占領した際、当時ヨルダンが管理していたパレスチナ博物館(Palestinian Museum)から死海文書などの文化財を持ち去ったと主張。死海文書の所有者がヨルダンであることを証明する法的文書を所持しているという。

 1949年以降、東エルサレムはヨルダンの統治下にあったが、1967年の6日間戦争でイスラエルが占領。国際社会の承認がないまま、東エルサレム併合を宣言した。

 その後、ヨルダンとイスラエルは1994年に平和条約を締結している。

■展示中止を求められたカナダ

 問題となっている死海文書には、紀元前3世紀に書かれたものも含まれており、カナダ・トロント(Toronto)のロイヤルオンタリオ博物館(Royal Ontario Museum)で10日まで、展示されていた。

 展示に先立ち、ヨルダン政府は、カナダ、ヨルダン両国が1954年に採択された「武力紛争の際の文化財保護議定書(Convention for the Protection of Cultural Property in the Event of Armed Conflict)」の批准国であることを根拠に、死海文書を「押収」するようカナダ政府に要請していた。

 また、パレスチナ自治区の政府高官も前年4月、カナダのスティーブン・ハーパー(Stephen Harper)首相に展覧会の中止を求めていた。

 これに対しカナダ外務省の報道官は今月初め、「死海文書に関してイスラエル・ヨルダン両国の言い分は食い違っており、この件にカナダ政府が介入するのは不適切だろう」とAFP記者に語っている。(c)AFP/Ahmad Khatib