【1月3日 AFP】家庭や病院などで一般的に使われている消毒剤が、ある種の病原菌の抗生物質に対する耐性を高めてしまうことがアイルランド国立大学(National University of Ireland)の研究で明らかになった。

 抵抗力が弱った人に感染症を引き起こす「日和見菌」の1つで、院内感染の原因の10%を占める緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)で実験したところ、急速にDNAを変異させ、BSKとして知られる消毒剤、塩化ベンザルコニウムの高濃度液に対し、通常の緑膿菌の400倍もの抵抗能力を獲得することが分かったという。

 塩化ベンザルコニウム液は人体には無害で、バクテリアや菌類、藻類などの殺菌・清掃用のさまざまな製品で使用されている。

 またさらに問題なことに、抗菌剤として使われる抗生物質シプロフロキサシンに対する耐性を、シプロフロキサシンと接触することなく、緑膿菌が獲得してしまうことも確認された。シプロフロキサシンはいくつかのバクテリア感染症で最もよく使われる抗生物質で、致死性のある炭疽菌の感染治療では主要な薬でもある。

 そのほかにもメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureusMRSA)やクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)といった菌が同様に抗生物質に対する耐性を形成しうるという。

 研究チームのGerard Fleming教授は、消毒剤は薄めすぎたりせずに正しく使用することが重要だとしている。論文は今月、専門誌「マイクロバイオロジー(Microbiology)」に掲載される。(c)AFP/Marlowe Hood