【12月21日 AFP】人類の最良の友人たちが、地球環境にとっては最大の「敵」である可能性がある――。ペットの犬の「カーボン・フットプリント(二酸化炭素排出量)」は高燃費のスポーツ用多目的車の2倍以上だとする新たな研究が、注目を集めている。

■餌と餌の生産に必要なエネルギーを計算

 ニュージーランドのビクトリア大学ウェリントン校(Victoria University of Wellington)で持続可能な生活環境について研究しているロバート・ベイル(Robert Vale)、ブレンダ・ベイル(Brenda Vale)夫妻は、有名ブランドのペットフードを調査し、中型犬1匹が1年間に消費する餌の量を、約164キロの肉と95キロのシリアルと割り出した。

 これらの餌を産出するのに必要な土地と中型犬1匹のエコロジカル・フットプリント(環境に与える負荷を面積で示したもの)を合わせると、年間0.84ヘクタールという計算になった。これは、年間走行距離1万キロの四輪駆動車1台とその生産に必要なエネルギーのエコロジカル・フットプリント(0.41ヘクタール)の約2倍に相当する。

 この結果を確認するため、英科学誌『ニュー・サイエンティスト(New Scientist)』は英国のストックホルム環境研究所(Stockholm Environment Institute)に、ペット犬のエコロジカル・フットプリントを独自に計算するよう依頼した。導き出された結果は、ベイル夫妻のデータと同じだった。

 夫妻によると、環境に優しくないペットは犬だけではない。

 猫1匹のエコロジカル・フットプリントは約0.15ヘクタールで、フォルクスワーゲン・ゴルフ(Volkswagen Golf)1台を1年間走行させるよりもわずかに少ない程度。ハムスター2匹はプラズマテレビ1台、金魚1匹は携帯電話2台と同程度のエネルギーを消費するという。

■犬や猫が生態系を破壊?

 ベイル夫妻は、この研究結果を「Time to Eat the Dog: The Real Guide to Sustainable Living(犬を食べる時:持続的な生活のための実用ガイド)」という本にまとめたが、一部の飼い主たちはまるで自分たちが「トラブルメーカー」と名指しされたかのようだと怒っている。

 猫7匹と犬2匹――環境への負荷でいうと車を何台も所有しているのに等しい――を飼うある女性は、「ペットたちに対するわたしたちの愛情、そして彼らがわたしたちに与えてくれるものは、環境への憂慮に勝る」と話した。

 夫妻によれば、ペットが環境に与える影響は二酸化炭素の面だけではない。猫と犬は生態系を破壊し、病気をまき散らし、水路を汚していると、夫妻は指摘する。

『ニュー・サイエンティスト』によると、英国内には770万匹の猫がいるが、年間で平均1億8800万以上の野生動物が猫に補食されているという。猫1匹あたり鳥、ほ乳動物、カエルを年に25個体殺している計算になる。

 犬も同様に、散歩する地域の生物多様性を破壊しているという。彼らの排せつ物は川や小川のバクテリアレベルを上げるため、安全な飲み水が得られなくなり、さらに水中の酸素が失われて水生動物を死に至らしめるというのだ。

 また、猫のフンは犬のフンよりも有害である可能性があるとしている。猫のフンをトイレに流すと、トキソプラズマ原虫がラッコなどの水生動物に寄生し、致死性の脳疾患の原因になる場合があるという。

■最良の解決策はペットを「食べる」こと?

 だが、こうした恐ろしい展望を食い止める方法は存在すると夫妻は説く。その1つが、たんばく質豊富な肉をなるべく与えないこと。肉を厳選したドッグフードより、魚の頭や魚屋から出る生ゴミを与えた方が、環境への影響は少ないという。

 ほかにも、犬を自然豊かな場所では散歩させない、小動物を追いかける衝動が高まる夜間は猫を家の外に出さない、などが上げられている。

 ベイル夫妻によると、最も良い方法は、ペットを2つの目的を兼ねて飼うことだ。例えばニワトリによる環境への負荷は、食用の卵を産ませることで相殺できる。ウサギは、最後にはディナーテーブルの皿の上に載せられることで、その生涯における環境負荷を埋め合わせることができる、としている。(c)AFP/Isabelle Toussaint and Jurgen Hecker