【12月16日 AFP】タコは人間が思っている以上に頭が良いのかもしれない――。オーストラリアの研究チームが15日、米科学誌「カレント・バイオロジー(Current Biology)」に、タコがココナツの殻を攻撃から身を守る「よろい」として使っているという発見を報告した。

 豪ビクトリア博物館(Museum Victoria)の生物学者、ジュリアン・フィン(Julian Finn)氏は、こぶし大のメジロダコ(学名:Amphioctopus marginatus)が海草のついたココナツの殻を拾い、持ち去っていく様子を初めて見たときは「腰を抜かした」という。

 フィン氏はAFPに対し、「われわれは通常、いわゆる下等生物と言われている無脊椎(むせきつい)動物と複雑な行動とを結びつけて考えない」と語った。

 道具の使用は、知性をもっていると定義する要素の1つだと考えられている。当初は人間だけの特権と考えられていたが、これまでに人間以外の霊長類やほ乳類、鳥類などでも確認されている。無脊椎動物が道具を使用していることが確認されたのは今回が世界で初めてだという。

 フィン氏は、メジロダコが殻をもってぎこちなく歩いている様子を初めて見た時、この行動が、単にタコによる奇妙な水中行動の異常例なのかどうか判断がつかなかったという。

 フィン氏はインドネシア沖で行った研究で、10年以上にわたって約20匹のタコを定期的に観察した。うち4匹がココナツの殻を長距離にわたって運んでいたという。「海底の泥の中にはココナツの殻とともに多くのタコがいたが、この4匹はココナツの殻を拾い上げ、自分の体の下に抱えて海底を歩いていた。おもしろい光景だったよ」。

 フィン氏によると、素早く移動できず捕食者に弱いメジロタコは、殻を持ち歩いていざというときのシェルターとして使うのだという。

「後で役立てるために殻を持ち歩いている。ここがほかの生物と異なる点だ」と語るフィン氏は、同様の習性を持つ生物は他にも見つかるだろうと語った。(c)AFP