【11月26日 AFP】フランス・パリ(Paris)郊外にアトリエを構えるアーティスト、クリスチャン・ボルタンスキー(Christian Boltanski)氏(65)はこのほど、風変わりな方法で最新作を販売した。それは、代金を一度に受け取るのではなく、自分が死ぬまで定期的に一定金額を受け取り続けるという方式だ。

 作品も変わっている。来年1月から4台のビデオカメラで昼夜を問わずボルタンスキー氏のアトリエを撮影し、その映像をオーストラリアのタスマニア(Tasmania)島の洞窟に生中継するというもので、撮影は彼の死まで続く。

 購入したのは、カジノで財を成したオーストラリアのプロギャンプラー、デービッド・ウォルシュ(David Walsh)氏。支払いが月決めなのか年額なのかボルタンスキー氏は語らなかったが、同氏が長生きすればするほど、ウォルシュ氏が支払うべき金額は増える。

■「悪魔とのゲーム」、勝負の期間は8年

 パリ南西の郊外マラコフ(Malakoff)にあるアトリエでAFPの取材に応じたボルタンスキ氏ーは、これは契約ではなく「悪魔とのゲーム」なのだと語った。

「この男(ウォルシュ氏)は賭けで負けないんだそうだ。そしてこのゲームでも自分が勝つと思っている。本当に負けないやつとか、自分は負けないと思っているやつとか、そんなのは悪魔に決まっているだろう」

 ウォルシュ氏は、ボルタンスキー氏が8年以内に死亡すればこの「ゲーム」で「もうける」ことができると踏んでいる。

「わたしがあと3年で死ねば、彼の勝ちだ。10年生きればわたしが勝つ。彼は、わたしが8年以内に死ぬと言った。おそらくそうなんだろう、彼は賭けで負けたことがないんだから。実際わたしは自分をあまり大事にしないしね」とボルタンスキー氏。

「だが生き延びてみせるよ。いつだって悪魔と闘うことはできる」

■最期は日本の小さな寺で

 この風変わりな支払い方法を思いついたのは、医師の息子で生涯「死」に魅了され続けてきたボルタンスキー氏の方だった。長時間カメラに映り続けることも気にしてはいないようだ。

「(カメラがあるのは)寝室ではなく、わたしのアトリエだからね」と言う同氏は、いずれにしろ映像が送られるのは「行った人など誰もいない」タスマニアだと平然。映像はDVDに収められるが、ボルタンスキー氏の存命中はその利用に制限が課されるのだという。

 ウォルシュ氏も、エジプトのミイラを収集するなど死に対する一種の情熱を持っている人物だという。

「わたしの遺灰を買いたかったそうだ。断ったがね。タスマニアで人生を終えたくはないんだ。わたしには、日本の小さな寺が合っていると思う」とボルタンスキー氏は話した。(c)AFP