【11月25日 AFP】イスラム教の大巡礼「ハッジ(Hajj)」を管理しているのはサウジアラビア政府かもしれないが、200万人を超える巡礼者たちを実際に動かしているのは、メッカ(Mecca)に古くから暮らすひと握りの一族だ。ハッジのガイド役、いわゆる「ムッタウィフ(muttawif)」は、これらの一族が独占している。

 彼らは、世界中から満を持してやってくる巡礼者たちの面倒を見て、ハッジを無事行えるようあらゆる手はずを整えるのだ。
 
 インドネシアからの巡礼者らを乗せたバスが到着するのを待つイマド・アブドラ(Imad Abdullah)さん。彼は、東南アジアからの巡礼者を専門とするムッタウィフだ。「彼らがメッカに一歩足を踏み入れた瞬間から、われわれはすべてをアレンジします。宿泊、食べ物、交通手段、そして儀式も。巡礼中に生じたどんな問題も解決します」

 巡礼中の渡航書類の保管、重要な聖地への案内。そして、巡礼の最後には買い物ツアーも組む。

 数週間にわたって昼夜張り付いていなければならない過酷な仕事だが、メッカに住む若い男女の多くがこの仕事に就きたいと思っている。というのも、もうけが大きいからだ。経験にもよるが、たった数日間で800~5000ドル(約7万~44万円)以上を手にすることができる。外国語を話せることも、ガイドの必須条件だ。担当する地域の言語がぺらぺらというガイドも少なくない。

■まるでコンシェルジュ?

 ムッタウィフは、メッカのいくつかの一族が担当してきた伝統的な職業だが、現在のように6つの会社に統合したのはサウジアラビアのアブドルアジズ・ビン・サウド(Abdul Aziz bin Saud)初代国王で、1930年代のことだった。

 アブドラさんの一族は150年前からハッジ・ガイド業を営んでおり、現在はその統合により会社組織になっている。ムッタウィフをかれこれ30年間やっているアブドラさんは、「わたしの息子たちが(ムッタウィフを)継ぐことになる」と話した。

 彼はこれまで、実にさまざまなことを経験してきた。ハッジ中に産気づいた女性を病院に運んだのも一度や二度ではない。今回担当するインドネシアの巡礼者たちは、サウジ料理がお気に召さないようで、彼らの口に合った食べ物を調達しようとアブドラーさんは奔走している。(c)AFP