【10月12日 AFP】パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)のマラーランド動物園(Marahland ZooHappy Land Zoo)で、ロバを白黒のしま模様に塗った「シマウマ」が、イスラエルによる封鎖下の生活のシンボルとして、また地元の数少ない娯楽として、話題を呼んでいる。

 ロバは、ビニールテープとフランス製の髪染めを使い、2日かけて「改造」された。「本物のシマウマはわれわれには手がでないからね」と動物園を経営するマフムードさん。

■イスラエルの封鎖で動物が高価に

 ガザ地区では、2007年にイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)が実権を掌握して以降、イスラエルによる封鎖が続いており、人道支援物資以外の物流が途絶えたままだ。封鎖に対抗すべく、エジプトとの国境に密輸用のトンネルがいくつも掘られ、武器だけでなく車やガソリン、子どもたちのおもちゃなど、さまざまな品物が運び込まれている。

 だが、頻繁に行われるイスラエル軍のトンネル空爆をかいくぐって運ばれる密輸品は、とても高価だ。

 マラーランド動物園でも、トンネルを通じて赤ちゃんライオン1頭、ダチョウのひな2羽を入手した。だが、高価なシマウマは入手できず、マフムードさんは苦肉の策として、ガザ地区の路上でならどこでも見かけ、値段もシマウマの40分の1で済むロバを代用にすることを思いついたという。

■餌も薬も足りず、経営もピンチに
 
 ガザ地区には150万人が密集して暮らすが、封鎖下の生活で娯楽は少なく、ガザ市(Gaza City)郊外にあるマラーランド動物園は、数少ない人気スポットの1つだ。

 といっても、現在、同動物園で見られる動物はライオン1頭、ラクダ1頭、ダチョウ2羽と鳥類数羽だけだ。また、十分な餌を与えられないため、動物たちは病気がちだが、封鎖のせいで薬は手に入らないという。おりも狭く、汚れている。

「動物愛護団体がここにいたら我々全員逮捕されてしまうだろう。わたしも心を痛めている。でも、できる限りのことをしているんだ」(マフムードさん)

 以前はヒョウやサルもいたが、今年初めにイスラエルがガザに軍事進攻した際、飢えで死んでしまった。イスラエル軍の戦車が動物園の入口をふさぎ、3週間にわたって職員が中に入れなかったためだ。「救急車を呼んでみたが、人間でさえ助けられないんだと言われてしまった」

 さらに同園を悲劇が襲う。マラーランド動物園は、貧しいガザ市民も楽しめるよう子どもの入園料を25円程度に抑えてきたが、自費を投じて経営してきたマフムードさんがついに破産してしまったのだ。このため、同園は近々、売りに出される予定だという。(c)AFP/Djallal Malti